Davell Crawford / My Gift To You
2013年、あけましておめでとうございます! と書いてる今は8月下旬。2013年も残すところあと4ヵ月となってしまった…。去年のクリスマスに更新してから音沙汰なし…ってことで、もう誰もチェックしてないだろうと思っていたら、最近会った人から「ブログ、辞めたんですか?」とか「Essence Fest.のリポ、早くやってよ!」と立て続けに言われたので、近況報告(?)も兼ねた言い訳の更新です(またか…)。
おかげさまでいろいろやらせてもらってまして、忙しい自慢に聞こえたらゴメンナサイなんですけど、今年は自分でもビックリするほどライナーノーツの仕事が多く、最近は2日に一本の割合でライナーを書いている感じ。7割がソウル系の再発、残りがR&Bの新譜で、とにかく猛烈な再発ラッシュということもあり、猫の手も借りたい…って感じなのでしょう(笑)。6月からはタブー・レコーズの国内再発(英Demonの企画を日本用にアレンジ&独自復刻)のお手伝いもしてたりして…そんなわけでブログなんて書いてる暇がない、ことはないんだけど気力がない。と言いつつ、Facebookでは、大半が顔見知りなのでエクスキュースを必要としないというか、間違えたり変なこと書いたりしても大目に見てもらえそうなので、新着の音ネタやライヴの感想なんかを思いついたままに書いていたりするのですが。もちろんブログも雑誌の原稿とは違って締切りや字数制限がないし、気軽に書けるはずなんだけど、それでも5分もかからずに書いてしまえるFacebookやTwitterに比べるとやっぱり構えてしまう。てなわけで、今回はFacebookに書くつもりで、推定10人くらいの読者の方に向けてEssence Fest.リポートまでの繋ぎの投稿を。
とはいえ、放置しすぎたせいでネタが山のようにある。昨夏のニューヨーク探訪もまとめたいけど1年経っちゃったし、今夏ニューオーリンズの帰りに寄ったシカゴでのアレコレもまとめたい。最近の話なら、Facebookで無駄に熱く語ってしまった“ロビン・シックvsマーヴィン・ゲイ遺族”についても、面白がるわけじゃないけど、ここで書いてもよかったのかな?とも。でも、やっぱり、ちゃんと書きたいのはR&Bのアルバム・リヴュー。R&Bは毎年面白いけど、今年も良盤だらけで、ホントにどんどん面白くなってる。オルタナティヴなそれじゃなくてメインストリームが。TGTとかK.ミシェルあたりも、がっつりリヴューしたい。で、思い出しちゃったけど、「2012年のR&Bベスト、やります!」とか言ったくせに結局やってないですね。もはや今さら…なので、超大雑把にシーンを俯瞰して一言で言うと、2012年メインストリームR&Bのトレンド(~2013年シーンの予兆)はサウンドトラック『Think Like A Man』にほぼ集約されていたのではないでしょうか。収録アーティスト、そしてプロデューサー/ソングライターのクレジットを改めて見てみてください。どうです? …これ以上は書きませんが。
で、ようやく本題。Essence Fest.リポまでの繋ぎってことで、今回はニューオーリンズ(NOLA)のネタ。今年からライターとして参加させてもらってる『ブルース&ソウル・レコーズ』誌(略称BSR。bmrの姉妹誌)で、ちょうど「ニューオーリンズの今」という特集が組まれてまして。これがBSRならではのブルース/ソウル視点で書かれた良記事で、そこで書かれてるライター諸氏の足元にも及ばないものの自分も昔から普通に、いや相当にNOLA音楽が好きで、今回の特集も(全部ではないけど)食い入るように読んでしまった。なにしろ、20年前、学生だった頃に“自分的音楽ルーツ探訪”と称してアメリカ一人旅をした時、最終目的地に選んだのがNOLA。その時は、まだディープな場所に行けず、観光名所ばかり見てつまんなくて、もう来ることはないかな…なんて思っていたのだけど、2005年にEssence Fest.に行き始めてから、今年で9回目。一番行っていたニューヨークを超えてしまった。そんなわけで、これまでにたまった思い出を語っていけばきりがないのだけど、トロンボーン・ショーティやダンプスタファンク、ホット・8・ブラス・バンドなど、個人的にも愛聴しているイキのいい現行NOLAミュージシャンの記事を読みながら今年の旅を思い出しているわけです。
今回の特集には、毎年Essence Fest.の特集も組んでいる地元の音楽/文化情報誌(フリーペーパー)『offBEAT』の編集長も寄稿していて、これもなかなかの読み応え。余談になるけど、フレンチ・クオーターを東に突き抜けると、フレンチメン・ストリートという、フレンチ・クオーターほどベタに観光地化されていないライヴハウスやレストランが並ぶ通りがあって、そこに行くと「『offBEAT』は無料の雑誌です。買わないように」という注意書きの看板みたいなのが目に飛び込んでくる。つまり、どこかの店から『offBEAT』を大量に取ってきて、事情を知らない観光客に売りつけて金を稼ぐ不届き者がいるわけだ(笑)。まあ、そんなところがニューオーリンズというかアメリカらしいのだけど。日本に置き換えると、例えばタワー・レコードが発行してる『bounce』とか『intoxicate』を路上で売っちゃうのと一緒。
そんなビッグ・イージーなNOLAへ向かう途中、ホット・8・ブラス・バンドやPJモートンの新作(PJの新作『New Orleans』は非NOLA録音だが)とともにiPodで聴いていたのが、6月に発売されたばかりのダヴェル・クロフォードの新作『My Gift To You』だった。BSRの特集には未掲載だったが、あの“Iko Iko”(の原曲“Jock-A-Mo”)のオリジネイターとして知られるジェイムズ“シュガーボーイ”クロフォードの孫であるダヴェル(75年生まれ)は、ゴスペルをルーツとする鍵盤奏者/ヴォーカリスト。今回の新作は99年リリースの『Born With The Funk』から14年ぶりとなるアルバムで、ハリケーン・カトリーナに関するアレコレも含めて、長い間たまっていたものをドバっと吐き出した(詰め込んだ)ような大作となっているのだ(録音期間は2011年10月~2012年8月)。ジャンル的には一応ジャズに分類され、今作では、お馴染みのNOLAクラシックを織り交ぜながら、彼自身による静謐なタッチのピアノと優しいヴォーカルで故郷NOLA/ルイジアナへの思いを綴っている。そして凄いのが、NOLA出身のミュージシャンを中心とした豪華ゲスト陣。ドクター・ジョン、ニコラス・ペイトン、スティーヴ・ライリー、ドナルド・ハリソンJr.、ウォルター“ウルフマン”ワシントン…と、NOLAの大御所がズラリ名を連ねているのだ(大御所ということではボビー・ハンフリーも参加)。
で、個人的にオッ!と思ったゲストが、70sフュージョン調の“River/White Socks & Drawers”にドナルド・ハリソンJr.やドクター・ジョンとともに名を連ね、ズケズケとラップをかましているクイーン・オブ・バウンスことビッグ・フリーダ(10月にニューEPを発表予定)。今や地元以外でも活躍する“NOLAバウンス界のシルヴェスター”とでもいった感じのドラァグ・クイーン/ラッパーで、現行NOLAアクトの代表として伝説の地元ミュージシャンたちと顔を突き合わせるという、この新旧NOLAのクセ者どうしの共演が、もう痛快すぎなのだ。こういうの大好き。また、カヴァーでは、今年のNew Orleans Jazz Fest.に出演したビリー・ジョエルの“The River Of Dreams”、ルイジアナ女性のサザン・ホスピタリティに感激して書かれたメイズの“Southern Girl”なんかも取り上げられていて、楽しい、楽しい。で、聴いてて思ったのは、このアルバム、佇まいがロバート・グラスパー・エクスペリメントの『Black Radio』に似てて…いや、実際は全然違うんだけど、ひょっとするとアルバム制作の後半あたりで刺激を受けたんじゃないかなぁ?なんて瞬間もあったりして。まあ、僕の勝手な解釈ですけど。
ともあれ、当たり前だけどNOLAは才能の宝庫。Essence Fest.のリポでも紹介する予定のウォーター・シードのようなアーバン・ソウル/ジャズ系アクトまで含めればホントにたくさんいる。R&Bでは、個人的に偏愛しているコートニー・ハート嬢とかも。ルイジアナ(州)まで広げれば、今年はレ・ジットの強力な新作も出たんだった。…と、ゴチャゴチャと書いてしまったが、次は(おそらく)Essence Fest.のリポ。来年のチケットが発売されるまでにはアップしたいと思っています。