2012年03月18日
VA / dome:Twenty Years
“UKソウルの良心”と言われるドーム・レコーズが創立20周年を迎えた。かつてCBSレコーズなどでA&Rを務めていたピーター・ロビンソンが92年に興した同レーベルは、アシッド・ジャズよろしく、当時のUS R&Bが失いかけていたオールドスクール・ソウルのリアルなグルーヴを呼び覚まそうと、“Home of UK R&B”をキャッチフレーズに、UKらしいアーバンで洒落たR&Bを送り出してきた。何をもって“リアル”なのかというアレはこの際置いておいて。
そんなドーム・レコーズの20周年を記念した3枚組のコンピレーションが登場。化粧箱には3枚のCDのほか、40ページに及ぶブックレットも収録され、ライナーノーツ(英文)ではドーム20年間の歴史や所属アーティストなどについて言及されている。UKソウル史を紐解く資料としても、かなり使えそうな内容だ(まだ全部読んでないのですが…)。
CDには、今のアデルみたいな存在でもあったUKブルー・アイド・ソウル歌姫のルルがボビー・ウーマックとデュエットした“I'm Back For More”(アル・ジョンソン名曲のカヴァー)を筆頭に、ビヴァリー・ナイト、シンクレア、ビヴァリー・ブラウン、フル・フレイヴァ、ドナ・ガーディアー、ヒル・ストリート・ソウルなど、UKソウル懐かしの面々の曲が並ぶ。UKソウルがUKソウルらしかった時代の曲。ただし、これらドーム産UKソウルの名曲は、そのほとんどがディスク1に収まり、残るディスク2、3(一部ディスク1にも)にはUS R&B、とりわけネオ・ソウル系アーティストの曲が、リミックスや2012年発表の曲も含めてズラリと並んでいる。アンジェラ・ジョンソン、コーニャ・ドス、ジュリー・デクスター&カーリ・シモンズ、ドニー、ゴードン・チェンバース、エリック・ロバーソン、ヘストン、エイヴリー・サンシャイン、アンソニー・デイヴィッドなど。
思えばUKソウルのシーンは、クレイグ・デイヴィッドが登場した2000年あたりから様相が変わり始め、UKガラージ~2ステップに傾いたエッジーなR&Bが主流に。そうなると70年代ソウル的なスムーズ&メロウなサウンドを売りにしていたドームは分が悪い。実際ドームでは、それまでのUKソウルらしいUKアーティストも減った。2000年代にそれっぽい音で出てきたのはアヴァーニくらいだったかもしれない。
こうしてドームは、実力がありながらインディでの活動を余儀なくされている、もしくは自主的にインディで活動しているUSネオ・ソウル系アーティストの受け皿のような役目を果たすレーベルとなっていく。MCAの消滅で契約が宙に浮いたラサーン・パターソンを受け入れたのもドームだった。また、フレッド・マクファーレンらがサポートしたデニス・テイラーをはじめ、ロージー・ゲインズやブレンダ・ラッセル、元バイ・オール・ミーンズのマイクリン・ロデリック(リン・ロデリック)といったUSシーンで不当な扱いを受けていた(?)キャリアのあるアーティストにも目をかけた。いつの間にか“UKソウルの良心”は“US R&Bの良心”になっていたのだ。つまりドームの20年は、少々乱暴な分け方だが、前半の10年がUKソウル、後半の10年がUSネオ・ソウルだったということになる。もっとも、ネオ・ソウルは、90年代UKソウルと同じく70年代ソウルの再生的な一面もあるので、そう考えるとドームの姿勢は一貫していると言えるが。
ドーム以外では、UKだとエクスパンション、USでは近年シャナキーが似たようなカラーを打ち出し、その地位を脅かしているように見える。だが、トーキン・ラウドから独立したインコグニートを受け入れたり、2010年にはあのドライザボーンをドライザボーン・ソウル・ファミリー名義で復活させるなど、“UKソウルの良心”としてのレーベル・カラーは失っていない。果たして、次の10年はどうなる?
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そんなドーム・レコーズの20周年を記念した3枚組のコンピレーションが登場。化粧箱には3枚のCDのほか、40ページに及ぶブックレットも収録され、ライナーノーツ(英文)ではドーム20年間の歴史や所属アーティストなどについて言及されている。UKソウル史を紐解く資料としても、かなり使えそうな内容だ(まだ全部読んでないのですが…)。
CDには、今のアデルみたいな存在でもあったUKブルー・アイド・ソウル歌姫のルルがボビー・ウーマックとデュエットした“I'm Back For More”(アル・ジョンソン名曲のカヴァー)を筆頭に、ビヴァリー・ナイト、シンクレア、ビヴァリー・ブラウン、フル・フレイヴァ、ドナ・ガーディアー、ヒル・ストリート・ソウルなど、UKソウル懐かしの面々の曲が並ぶ。UKソウルがUKソウルらしかった時代の曲。ただし、これらドーム産UKソウルの名曲は、そのほとんどがディスク1に収まり、残るディスク2、3(一部ディスク1にも)にはUS R&B、とりわけネオ・ソウル系アーティストの曲が、リミックスや2012年発表の曲も含めてズラリと並んでいる。アンジェラ・ジョンソン、コーニャ・ドス、ジュリー・デクスター&カーリ・シモンズ、ドニー、ゴードン・チェンバース、エリック・ロバーソン、ヘストン、エイヴリー・サンシャイン、アンソニー・デイヴィッドなど。
思えばUKソウルのシーンは、クレイグ・デイヴィッドが登場した2000年あたりから様相が変わり始め、UKガラージ~2ステップに傾いたエッジーなR&Bが主流に。そうなると70年代ソウル的なスムーズ&メロウなサウンドを売りにしていたドームは分が悪い。実際ドームでは、それまでのUKソウルらしいUKアーティストも減った。2000年代にそれっぽい音で出てきたのはアヴァーニくらいだったかもしれない。
こうしてドームは、実力がありながらインディでの活動を余儀なくされている、もしくは自主的にインディで活動しているUSネオ・ソウル系アーティストの受け皿のような役目を果たすレーベルとなっていく。MCAの消滅で契約が宙に浮いたラサーン・パターソンを受け入れたのもドームだった。また、フレッド・マクファーレンらがサポートしたデニス・テイラーをはじめ、ロージー・ゲインズやブレンダ・ラッセル、元バイ・オール・ミーンズのマイクリン・ロデリック(リン・ロデリック)といったUSシーンで不当な扱いを受けていた(?)キャリアのあるアーティストにも目をかけた。いつの間にか“UKソウルの良心”は“US R&Bの良心”になっていたのだ。つまりドームの20年は、少々乱暴な分け方だが、前半の10年がUKソウル、後半の10年がUSネオ・ソウルだったということになる。もっとも、ネオ・ソウルは、90年代UKソウルと同じく70年代ソウルの再生的な一面もあるので、そう考えるとドームの姿勢は一貫していると言えるが。
ドーム以外では、UKだとエクスパンション、USでは近年シャナキーが似たようなカラーを打ち出し、その地位を脅かしているように見える。だが、トーキン・ラウドから独立したインコグニートを受け入れたり、2010年にはあのドライザボーンをドライザボーン・ソウル・ファミリー名義で復活させるなど、“UKソウルの良心”としてのレーベル・カラーは失っていない。果たして、次の10年はどうなる?
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