2012年03月17日
Matt Covington / Matt Covington
続いてはリイシュー(再発)もので。しかも、ウルトラ・レアなブツ! まあ、個人的はレア盤と言われるものには実はあまり興味がなくて、中古盤で5000円以上の値段がついていると即諦めるヘタレdigger。そんな人間が開設したばかりのブログで、こんなものを紹介するとはけしからん!…という声はたぶん飛んでこないと思いますが、フィリー・ソウル悲運のファルセッター、マット・コヴィントンのソロ作です。
某オークション・サイトでは、オリジナルLPが1000ドル(8万円前後)で取り引きされている、70年代ソウルのアルバムの中でも、とびきりHard To Findな一枚。インディ制作で配給もままならず、満足のいくプロモーションができなかったため結果としてレア盤となってしまったという、まあ、よくあるパターンのアレ。実は僕もオリジナルLPを持っていなかった。が、マットがリードを務めたフィリー・デヴォーションズの全シングル集『We're Gonna Make It』のライナーを書いた流れで(?)、僭越ながらこちらの解説も担当することに。昨年はエッセンシャル・メディア・グループから、そのフィリー・デヴォーションズのシングル集や、マットが80年代に自主レーベルのエイプリル・レコーズなどで発表したシングルを集めた『Philly Devotion-The Solo Singles』がCDリリース。同時期に本アルバムもリイシューされたのだが、何故か本作はデジタル配信のみでの販売だった。それを今回ディスク・ユニオンさんの鬼マニアなレーベル、MAGNUM CATがフィジカル発売したというわけ。もちろん世界初CD化だ。
原盤レーベルは、フィリー・デヴォーションズの初期曲を手掛けていたジップ・ジョンソンが主宰したジップ(Zip)・レコーズ。収録曲は全てジップとマットのふたりが書いたという。録音は70年代中期のフィラデルフィア。甘いムードや軽やかなノリはいかにもフィリーのそれで、スウィート、ダンサーとも申し分ない仕上がり。フィリー・デヴォーションズの“I Just Can't Say Goodbye”(邦題「涙のディスコティック」)で彼(ら)を知るファンを裏切らない内容なのだが、ここで聴ける音はシグマ・サウンド・スタジオ産のそれとは少し違う。自主制作で低予算だったこともあってか、MFSB一派はおそらく不参加。リズム・セクションに名を連ねるのはあまり聞き覚えのない連中だ。
しかし、プロデュース及びホーンズを担当したオディーン・ポープという名前は知っている。そう、この人は、フィリーの4人組ジャズ・コンボ、カタリストのサックス奏者。カタリストといえば、MFSBのノーマン・ハリスやロニー・ベイカーを起用した72年のシグマ録音曲“Ain't It The Truth”が、後年“グルーヴィなジャズ・ファンク”として再評価され、僕もその流れで知った。本作に関わったオディーン・ポープがカタリストのメンバーと同一人物であると断定はできないが、場所や人脈から考えるに、ほぼ間違いないだろう。音の面からしても、例えば74年の“キンサシャの奇跡”にインスパイアされたと思しきモハメド・アリ賛歌“Muhammad Ali”など、いくつかある軽快なファンク調の曲はカタリストの雰囲気に通じている。かなりディスコっぽいですけど。
もちろん、主役のマットは、全編であのセクシーで爽やかなファルセット美声を聴かせてくれる。特にフィリー・スウィートのマナーに則ったスロウ・バラードにおける彼の歌は、デルフォニックスのウィリアム・ハートやスタイリスティックスのラッセル・トンプキンスJr.、ブルー・マジックのテッド・ミルズなんかと比べても遜色ない、と僕は思う。こもった音の質感&妖しげな曲調の“Hey Love”なんかはモーメンツorホワットノウツみたいなニュージャージー・スウィート・ソウル風で、故ハリー・レイを思い出してしまった。
個人的には、リズム・ギターが心地よい軽快でメロウなダンサー“Country Folks”がフィリーらしい都会的な感覚がよく出ていて気に入った。ミディアムの“Finally Got Over On You”はモダン・ソウルを好むようなリスナーに受けそうだけど、これなんかを聴くと(フィリー出身の)ブレイクウォーターあたりに近いかな、とも。MFSBがやっていなくてもフィリーらしい音というのはちゃんとあるのだ(←偉そうですみません)。
まあ、レアというか、オリジナルのLPを持っていた人はたぶん日本でも数人(?)くらいだろうから、ほとんど発掘盤という感じかな。スウィート、ブギー、モダンの要素を兼ね備えた好盤。80年代にはバディ・ターナーらと組んで“We Got One”のような素晴らしい曲を出しているけど、そちらは『Philly Devotion-The Solo Singles』で。
某オークション・サイトでは、オリジナルLPが1000ドル(8万円前後)で取り引きされている、70年代ソウルのアルバムの中でも、とびきりHard To Findな一枚。インディ制作で配給もままならず、満足のいくプロモーションができなかったため結果としてレア盤となってしまったという、まあ、よくあるパターンのアレ。実は僕もオリジナルLPを持っていなかった。が、マットがリードを務めたフィリー・デヴォーションズの全シングル集『We're Gonna Make It』のライナーを書いた流れで(?)、僭越ながらこちらの解説も担当することに。昨年はエッセンシャル・メディア・グループから、そのフィリー・デヴォーションズのシングル集や、マットが80年代に自主レーベルのエイプリル・レコーズなどで発表したシングルを集めた『Philly Devotion-The Solo Singles』がCDリリース。同時期に本アルバムもリイシューされたのだが、何故か本作はデジタル配信のみでの販売だった。それを今回ディスク・ユニオンさんの鬼マニアなレーベル、MAGNUM CATがフィジカル発売したというわけ。もちろん世界初CD化だ。
原盤レーベルは、フィリー・デヴォーションズの初期曲を手掛けていたジップ・ジョンソンが主宰したジップ(Zip)・レコーズ。収録曲は全てジップとマットのふたりが書いたという。録音は70年代中期のフィラデルフィア。甘いムードや軽やかなノリはいかにもフィリーのそれで、スウィート、ダンサーとも申し分ない仕上がり。フィリー・デヴォーションズの“I Just Can't Say Goodbye”(邦題「涙のディスコティック」)で彼(ら)を知るファンを裏切らない内容なのだが、ここで聴ける音はシグマ・サウンド・スタジオ産のそれとは少し違う。自主制作で低予算だったこともあってか、MFSB一派はおそらく不参加。リズム・セクションに名を連ねるのはあまり聞き覚えのない連中だ。
しかし、プロデュース及びホーンズを担当したオディーン・ポープという名前は知っている。そう、この人は、フィリーの4人組ジャズ・コンボ、カタリストのサックス奏者。カタリストといえば、MFSBのノーマン・ハリスやロニー・ベイカーを起用した72年のシグマ録音曲“Ain't It The Truth”が、後年“グルーヴィなジャズ・ファンク”として再評価され、僕もその流れで知った。本作に関わったオディーン・ポープがカタリストのメンバーと同一人物であると断定はできないが、場所や人脈から考えるに、ほぼ間違いないだろう。音の面からしても、例えば74年の“キンサシャの奇跡”にインスパイアされたと思しきモハメド・アリ賛歌“Muhammad Ali”など、いくつかある軽快なファンク調の曲はカタリストの雰囲気に通じている。かなりディスコっぽいですけど。
もちろん、主役のマットは、全編であのセクシーで爽やかなファルセット美声を聴かせてくれる。特にフィリー・スウィートのマナーに則ったスロウ・バラードにおける彼の歌は、デルフォニックスのウィリアム・ハートやスタイリスティックスのラッセル・トンプキンスJr.、ブルー・マジックのテッド・ミルズなんかと比べても遜色ない、と僕は思う。こもった音の質感&妖しげな曲調の“Hey Love”なんかはモーメンツorホワットノウツみたいなニュージャージー・スウィート・ソウル風で、故ハリー・レイを思い出してしまった。
個人的には、リズム・ギターが心地よい軽快でメロウなダンサー“Country Folks”がフィリーらしい都会的な感覚がよく出ていて気に入った。ミディアムの“Finally Got Over On You”はモダン・ソウルを好むようなリスナーに受けそうだけど、これなんかを聴くと(フィリー出身の)ブレイクウォーターあたりに近いかな、とも。MFSBがやっていなくてもフィリーらしい音というのはちゃんとあるのだ(←偉そうですみません)。
まあ、レアというか、オリジナルのLPを持っていた人はたぶん日本でも数人(?)くらいだろうから、ほとんど発掘盤という感じかな。スウィート、ブギー、モダンの要素を兼ね備えた好盤。80年代にはバディ・ターナーらと組んで“We Got One”のような素晴らしい曲を出しているけど、そちらは『Philly Devotion-The Solo Singles』で。
soul_ringo at 18:03