Essence Music Festival 2012 観戦報告
もう5ヵ月ほど前のことになりますが……今年の夏もEssence Music Festival(以下EMF)に行ってきた。いろいろあってブログ放置状態だったが、ようやく座談会形式のリポート原稿をまとめ上げた次第。
EMFは、アフリカン・アメリカンの女性ライフスタイル誌『ESSENCE』の主催で95年からニューオーリンズで行われている世界最大規模のブラック・ミュージック・フェス。もともとは雑誌の創刊25周年を記念したイヴェントとして95年だけ行うはずだったものが評判を呼び、慣習化してしまったという。今やジャズ・フェスやマルディグラと並ぶニューオーリンズ市をあげてのビッグ・イヴェントとなり、今年で18回目。毎年、独立記念日前後の3日間、NFLニューオーリンズ・セインツの本拠地である[Louisiana Superdome](改め現在は[Mercedes-Benz Superdome])で行われる(2006年のみ、前年のハリケーン・カトリーナの影響でドームが使えず、ヒューストンの[Reliant Stadium]で開催)。一日の観客動員数は約7万人(3日間で20万人超)とされ、そこに集うお客さんの99%はブラック・ピープル、アフリカン・アメリカンの人たちだ。僕個人としては、カトリーナが街を襲う直前の2005年の回から参加し、今年で8年連続の観戦となった。
ライヴは、アリーナの“メイン・ステージ”とドーム内に4つある小型スペースの“スーパー・ラウンジ”で行われ、5つのステージが同時進行する。メイン・ステージでは一日に4~5組、スーパー・ラウンジでは各ステージ2~3組のライヴが行われ、3日通して40組前後のアーティストが登場。当然ながらライヴの時間も重なるわけで、全てのステージをフルで観ることができない……というのは大型フェスにつきものの悩みだが、EMFの場合、出演者がR&Bアーティストだらけなので余計に頭を悩ませる。けれど、悩みに悩んで選んだステージは、観客それぞれの“自分はこのアーティストを見に来たんだ!”という気持ちが会場(特にスーパー・ラウンジ)に一体感をもたらし、昂揚感を生む。
初回から2009年までは最終日の大トリをメイズfeat.フランキー・ビヴァリーが務め、それがフェスの目玉となっていたのだが、一昨年からメイズが欠場。これには多くの非難の声が上がった。しかし、それを補って余りあるほど出演者は豪華で、新人からヴェテランまで、その年の最旬R&Bアーティストが勢揃いする(ヒップホップ・アクトや地元のブラス・バンドも毎年数組出演)。今年は、前夜祭的なイヴェントとして若手や新人のフリー・ライヴが行われたり、昼間にはブロック・パーティと銘打った野外ライヴも行われるなど、パワーアップ。フェス開催期間中、ドームから少し離れたミシシッピ川沿いのコンヴェンション・センターでは、EMFと連動したアフロ・セントリックなイヴェントも行われている。もう、何から何まで目が離せないEMFなのだ。
さて。御存知の方もいらっしゃるかと思うが、これまでは座談会形式によるEMFの観戦リポートをbmr誌で発表していた。そもそも同企画は、かつてbmr編集部に在籍していた金子穂積さんと僕が始めたもの。結果的にそれは7年続いた。が、昨年bmr誌が休刊となり、今年は発表の場がない。ならば……ということで、今回は、渡米前から座談会のことを気にかけていたメンバーで自主的にやろうということになった。メンバーは、これまでもEMFに何度か足を運ばれている大御所R&BライターのJAM氏、今回が初観戦となるシンガーのSHIROW氏、それに僕の3人。JAMさんとは、ヒューストンでの臨時開催回も含め何度かご一緒し、bmrでの座談会にも同席させていただいた。その“ひと言”には本当に重みがあり、今回も頷くことしきり。一方、SHIROWさんとは今年が初対面。お若い方だがR&Bに対する造詣が深く、シンガーならではの鋭い批評眼を持ちながら温かい眼差しがあり、趣味も僕とドンピシャなので、今回参加していただいた。いずれにしても、歌モノR&Bに目がない3人による座談会。なんたって今年のEMFのテーマは〈The Power Of Our Voice〉ですから! 開催期間は7月6日~8日の3日間。座談会は1日ごとに分けて行った。以下から各ページに飛んでもらえればと思う。
●Day 1:7月6日(金)
●Day 2:7月7日(土)
●Day 3:7月8日(日)
各ページに掲載したアーティスト写真はブレまくりで、ド素人のそれ。綺麗な写真がネット上で出回っているなか何とも情けない限りだが、お許しいただきたい(メインステージの写真は1階席から巨大モニターを写したものです)。YouTubeにアップされている動画を貼り付ければ臨場感も出るのだろうけど、ここではあえてそれはやりません(そもそも会場内での動画撮影は禁止だったりする。写真撮影はOK)。
とにかく実際に現地で観るEMFは圧巻。そして、一度体験すると虜になってしまう。R&Bに詳しければ詳しいほど(これまでの音楽観を覆されるという意味で)ショックを受ける度合いが大きいのもこのフェスならではだと思う。R&B漬けの3日間。R&Bを趣味あるいは仕事の一部としている者にとって、これ以上のフェスはない。ここ1年のR&Bの動向が一気にわかる(わかった気になる)最高のショウケースとも言える。決してフェス好き・お祭り好きではない僕がこうも毎年通ってしまうのは、やはりEMFに、またニューオーリンズという街に特別な魔力があるからなのでしょう。
EMF2013のチケットは早くも発売開始。さて、来年はどうしよう……