Tara Priya / Tara Priya
レディシのライヴから1日置いて、またビルボードライブ東京へ。…なんて言うと遊んでばかりみたいだけど、先週はたまたま。今度は、2月にPヴァインから日本先行でデビュー・アルバムをリリースしたターラ・プリーヤ嬢。インド人とイラン人の血を引くエキゾチックな容姿が麗しいサンフランシスコ在住の女性シンガー・ソングライターの来日公演だ(24日:セカンド・ステージ)。
どこかマイアを思わせる小悪魔キュート系のルックスからはちょっと想像がつかないかもしれないが、幼少期にピアノとドラムを習得し、オペラやジャズも学び、ニューヨークのコロンビア大学では経済学を専攻していたという才媛。高校時代からソングライターとしての才能も開花させ、「ジョン・レノン・ソングライティング・コンテスト」で入賞、「ビルボード・ソング・コンテスト」で優勝といった輝かしい経歴を持つ。
デビュー・アルバムは、大学卒業後、地元のサンフランシスコに戻って制作した2枚のEPからの曲が中心で、古いリズム&ブルースをポップな感覚で今様に聴かせるレトロ・ヴィンテージなソウル盤。シャッフル・ビートの曲を快活に歌ったり、ブルーなバラードを時にアンニュイな表情を見せながら情熱的に歌ってみせる。わかりやすく言うと“エイミー・ワインハウス以降”というか、アデル、ニッキ・ジーン、ディオンヌ・ブロムフィールド、ジャスミン・カラ…とバラバラな個性を一緒に括っちゃうのも乱暴だけど、彼女の音楽もそうした流れにある。実際に繋がりもあるというラファエル・サディークの女性版とも言えるかな。地元も一緒だし。恋愛のダークな面をテーマにしているという歌詞は実体験に基づいているとのこと。
実は2月にも来日し、某レコードショップでミニ・ライヴを行っていたターラだが、バンドを従えての正式な来日公演は今回が初。何と主役のターラ以外、バンドのメンバーは全員白人の若者で、アメリカの学園モノのドラマに出てきそうなアマチュア・バンドっぽい初々しさ。ドラム、ベース、ギター、サックス、トランペットの男子(あえてこう書く)は、何だか若い頃のビーチ・ボーイズ風。その中にひとり水玉柄のワンピースを着たガーリーなキーボード女子がいるあたりがまた学園っぽくて、ちょい萌え。白人バンドを従えた有色人種のシンガーのステージということで、僕はEssence Music Festivalで観たソランジュ(ビヨンセの妹)のライヴを思い出してしまったのだが、音楽的にもソウルというよりオールディーズと言った方がしっくりくるそれはソランジュに近い。もしくはデビュー当初のメラニー・フィオナ。そんな雰囲気だ。
ターラの歌はやや一本調子なところもあるけど、生で聴く声もCDと同じくエモーショナル。レパートリーはもちろんアルバムの曲が中心なのだが、アルバムで“Southern Girl”なんて曲を歌っている彼女らしく(?)、バンド・メンバーの紹介を兼ねてジーン・ナイトの“Mr.Big Stuff”を歌ったり、エディ・フロイドの“Knock On Wood”を熱唱したり、ディープな一面も見せてくれた。そういえばアルバムにはベティ・スワンへの謝辞もありましたっけ。そんな趣味の彼女だけに今後の展開も気になるところ。MCでも名前を出していたけど、ラファエル・サディークと組んだら本当に面白いかもしれない。
終演後は、会場でお会いしたレココレ編集部のN氏夫妻と3人で軽く飲み、夫人のニューオーリンズ留学話などで盛り上がる。ライヴでジーン・ナイト(ニューオーリンズ出身)曲のカヴァーを聴いた後にNOLA話。そこで話題になったギャラクティックの新作(傑作!)についても書いてみたいけど、機会があれば。