Essence Music Festival 2012:Day 1(7/6)
座談会:JAM×SHIROW×林 剛
【Main Stage】
The Pointer Sisters(6:30PM)
Keyshia Cole(7:30PM)
Trey Songz(8:50PM)
D'Angelo(10:10PM)
Charlie Wilson(11:45PM)
【Super Lounge】
Coca-Cola:Gary Clark Jr.(7:00PM) Stephanie Mills(8:30PM) Rebirth Brass Band(10:15PM)
McDonald:Khris Royal & Dark Matter(6:45PM) Q.Parker,Super Jay & Greta Prince(7:45PM) Marsha Ambrosius(9:30PM&11:00PM)
Ford:Goapele(7:15PM) SWV(8:45PM&10:15PM)
Verizon Wireless:Vivian Green(7:30PM&9:00PM) Kindred The Family Soul(10:30PM)
※時間は当初の開演予定時間です。
■EMF2012、開幕!
林 剛(以下 林)「Essence Music Festival(EMF)の座談会形式によるリポートです。EMFの概要に関しては僕のブログで序文を書いてますけど、今年は会場の[Louisiana Superdome]が[Mercedes-Benz Superdome]と改名されました。で、今回のEMFのテーマが〈The Power Of Our Voice〉。“私たち(黒人)の声のパワーがどんなものか証明してみせる”といった感じでしょうか。そんなわけでメイン・ステージの一発目はポインター・シスターズ。これが幕開けにふさわしく華やかな、現役バリバリのステージ。“Fire”とか“Slow Hand”とか、曲はポップスっぽくても歌はさすがに濃いです」
SHIROW(以下S)「僕は今年EMF初参加です。毎年bmrでのリポートをわくわくしながら読んでいたのですが現在休刊中。ならば今年は自分が行こう!と思いまして(笑)。でもまさかこうしてお二人と一緒にリポートできるだなんて思ってなかったので恐縮です(笑)。地元代表ということで最初はポインター・シスターズ(註:出身はカリフォルニア州オークランド)でしたがオープニングから迫力満点でしたよね!そういえばニューオーリンズ滞在中に現地のCDショップもいくつか見て回ってたのですが、どの店もニューオーリンズのアーティストのコーナーみたいなのがあって、もちろんポインター・シスターズのCDも目立つ所に置かれていました。地元愛の強さを感じますよね」
JAM(以下J)「そうなんですよね。お店のディスプレイが物語ってくれていたように、ポインター・シスターズというと、アラン・トゥーサン含みのニューオーリンズ所縁のグループという意識が先行するんだけど、ステージではそのイメージに縛られない80年代に生まれたヒット・チューンの連打という感じで、改めて彼女達のヒット作品の多さを痛感させてもらった感じですね。顔触れの変わったメンバーについてはどう感じられました?」
林「恥ずかしながら現在のメンバーをちゃんと把握してなかったんですが、当日出演したのはルースとアニタのポインター姉妹に、ルースの孫娘というサダコ(・ジョンソン)の3人。後で調べてわかったのですが、サダコは85年生まれ。名前と顔つきからすると日本人の血が入っている? まあ、メインでリードをとってたのは青い衣装のルース。彼女が本当に歌えてました。ただ、ニューオーリンズでのフェスなのに“Yes We Can Can”をやらなかったというのは残念でしたが……」
J「やらないハズはないと思ってたからなあ」
S「サンプリングネタの定番でもある“Yes We Can Can”にしてもそうですが、僕の場合は他のアーティストがサンプリングやカヴァーで歌ってるのを聴いてから彼女達のオリジナルを知ったというケースが多いので、例えば“Fire”を聴いてもいまだにベイビーフェイス&デズリーが歌ってたなーとかっていう印象の方が強かったり。そんなことばかり考えながらライヴを楽しんでましたけど(笑)。それにしてもサダコ(!)そんなに若いんですね。このまま何世代にも渡って歌い続けていって欲しいです」
林「ラウンジに移って観たのは、昨年新作『Break Of Dawn』を出したゴアペレ。2006年にヒューストンで臨時開催されたEMFでチラッと観たことがあったのですが、歌も容姿も随分ノーブルになったというか。アメール・ラリューやシャーデーを思わせる美貌と、麗しくも芯のある歌声。少ししか観なかったですが、新作からの曲が中心のようでした」
S「アメール+シャーデーって表現はものすごくよく分かります。ソウルフルなんですが気品があって独特の世界観がありますよね。このEMFの観客って黒人が9割以上でライブ中もみんなとにかくよく歌うじゃないですか。ステージで歌ってるアーティストの声が聴こえないくらいに(笑)。でもゴアペレに関してはいい意味で観客も聴き入ってましたよね」
林「ヴィヴィアン・グリーンもちょっとだけ。前半3曲を観ただけなんですが、2年前に観た時と比べて劇的に成長してるというか、芯の太さも加わって貫禄が付いたという印象です。“Fanatic”でグイグイ引き寄せる歌とか、もの凄いグルーヴ感で引き込まれました」
S「ヴィヴィアンは見た目もすごく綺麗でしたし、本当に堂々としたパフォーマンスでしたね。僕もヴィヴィアンは2曲くらいでした。本来ならもっとゆっくり観たいんですが、次から次へとステージを移動しながら観ていたので。あまりに出演者が豪華すぎるがためにこうなってしまうのもEMFですね(泣)」
林「僕は観られなかったんですが、ブライアン・カルバートソンの新作『Dreams』で歌っていた“Still Here”もやったようで、そこでブライアンも登場したらしいです。観たかったなぁ」
■トレイ・ソングスを観逃しても…
林「そして、メインのキーシャ・コール。僕が席に着いた時はソウル・クラシックス・タイムで、アイズレー・ブラザーズ、メイズ、ローズ・ロイズの3連発で会場大合唱。最近ライヴで歌っていると噂になってましたが、ローズ・ロイズの“I'm Goin' Down”はホントにやるんだ、と(笑)。明日メアリー・J・ブライジ(MJB)も絶対やるのに。で、その後に“I Remember”がきて、客席大合唱。どうすればEMFのお客さんが喜ぶのか、彼女はよくわかっているなと思いました。もちろん“Love”も大合唱です」
S「“I'm Goin' Down”歌いましたねー! どうしてもメアリーと比較されがちですが、キーシャは彼女なりの地位を確立してるんだってのが今回の彼女のステージを観て改めて思いました。“I Remember”にしても“Love”にしてもこうやって大合唱できるバラードがあるのは大きな魅力ですよね」
J「僕はポインター・シスターズからキーシャ・コールまではメインに完全ステイ。キーシャ・コールは特にステージに現れた時のドームに流れるムードを体感したかったというのがあったんですが、これはもう数年前の彼女とは比べ物にならないくらいデカくなりました。“I’m Goin’Down”も完全に板につきましたね。更にEMFらしい歌い手になった印象です」
林「残念ながら僕は中盤だけ見て席を立っちゃったんですが、どことなく悲しげなオーラを身に包んでガムシャラに歌う感じは15年くらい前のMJBを彷彿させます」
S「今回EMFの三日目の出演者の中にイヴがいたわけですが、キーシャのステージに飛び入りで来て“Never”を一緒に歌うなんてことはなかったですね。ソウル・クラシックを歌った流れで歌って欲しかったのですが。ちなみにイヴは二日目のメアリーのステージに登場して“Not Today”をやるなんてこともなく、同じ会場のフェスとはいえ、なかなかそういうサプライズはないんだなーってのは思いました」
林「ラウンジでは、昨年〈Essence R&B Star〉で優勝したグレタ・プリンス、スーパー・ジェイ、そしてQ・パーカーの3者ワンセットのライヴ。僕はスーパー・ジェイから観たんですが、シングルで聴けてたニーヨ風情はさほどなく、結構ディープに歌い込んでいたのが印象的でしたね。元112のQ・パーカーは3者の中では当然ながらさすがの貫録。ソロ曲の“Show You How”なんかを熱唱してましたね。あと“ひとり112”も。“Only You”で観客にビギーのパートをラップさせて歌ってみたり、“You Already Know”をセクシーに歌ったり。そこそこ黄色い声も飛んでたような」
S「その中ではスーパー・ジェイだけ観れたのですが、ライヴだと想像したよりアツい歌声で好印象でした。Q・パーカーは全く観られなかったので観た人から後で話を聴いたんですが“ひとり112”ってのは聴きたかったです!数年前の112の来日公演は観に行ったのですが、Qはやたら脱いで肉体美を披露してた記憶が(笑)。余談ですがQはソロでカレンダーもリリースしてるんですよね。あれ売れてるんでしょうかねー(笑)」
林「今年も出しますよね(笑)。で、ラウンジでは2年連続となるステファニー・ミルズもあったんですが、翌日観ることにして僕はとりあえずパス。メインのトレイ・ソングスも、ここ数年毎年出てるんでパスしちゃったのですが、どうでした?」
S「僕はステファニーを1日目に観て2日目はパスしたんですけど、出来れば2日連続で観たいくらいのクオリティでした。もう、とにかく声がよく通るのなんのって!やはりその実力もあってかラウンジのお客さんもどんどん増えてきてパンパンになったのでかなり後ろから観てました。トレイはメインとラウンジとを移動しながら何曲かはちょっとずつ聴けてたっていう程度です。トレイのステージが悪いわけではないですが、それ以上にラウンジのアーティストが観たかったですし、トレイはまた来日しそうですしね。腰を振ったりレディへのサービスもたっぷりで、若い女の子の黄色い声援の多さではこの三日間のアーティストでナンバーワンだったと思います」
J「個人的にはラウンジの目玉にしていたのが彼女(ステファニー)で、ステージに登場する前に発した一節でもう完全に持っていかれてしまいました。当然分かっているハズの、あの“声”がスーっと場内に伝わってきただけで、もう生理反応的な雄叫び状態です。そんなの当たり前だろ! と言われてしまうかもしれませんが、透明度の高い澄みきったあの声、彼女にしか響かせられないあの声、まさにOnly One Voice、それがその通りに聴こえてきてくれる喜びを感じさせてもらったという感じで心底幸せな心持でした。曲では“Secret Lady”かな。“You Can't Run From My Love”もサイコーでした。で、メインのトレイ・ソングスに戻ったら、丁度はだけるタイミングで、館内に女子の大絶叫。これは席には戻れません(笑)。因みに、ほとんど見逃したに近いです」
林「トレイを観逃しても、EMFで観ておきたかったのがSWV。いや、これはもう予想通りラウンジ超満員、過去のヒットから新作『I Missed Us』の曲まで、ほぼ全曲が観客大合唱という…。ココの歌はパキーンと会場に響きわたるわけですが、それでもお客さんが歌っちゃって3人も感激と困惑の表情(笑)」
S「僕もSWVは昨年観たからガマンしようかなーとか思いつつ、やっぱり観たくて。新作からの曲以外は来日公演の時とセットリストはそんなに変わらないんですが、日本で観るのと明らかに違うのはお客さんのノリ。“Weak”や“Rain”など、なんせヒット曲が多いわけですけど、サビだけじゃなくAメロから曲の最後までフルで観客みんなで大合唱。この楽しさはEMFに来ないと体験できないです!」
林「新作からの“Co-Sign”とか“Do Ya”の反応もよかったですね。あとはパティ・ラベルの“If Only You Knew”での大合唱は想像してましたが、ターゲット盤と日本盤のみに収録されてたスウィッチの“There'll Never Be”まで皆が歌えちゃうってのが何とも。彼女たちもブリッジの部分を女性、男性に分けて合唱させたり……パフォーマーと客が一体になったライヴの典型というか。あと、ライヴを観るとリリーのアルト・ヴォイスが重要な要素になってるなということも改めて実感したり。そして、ラウンジではマーシャ・アンブロウジアスも観ました。ソロでは初登場です。新作『Late Nights & Early Mornings』のタイトル曲をソプラノ・ヴォイスで熱唱したり、“Hope She Cheats On You (With A Basketball Player) ”を客席の合唱とともにラップを交えて歌ったりしてくれたのも相当良かったんですが、やっぱりこの人は歌でもっていきます」
S「マーシャは一日に2ステージやったわけですが、二回とも観られたんです。でもタイミングが悪かったのか二回とも前半しか観られなかったので、“Say Yes”とか“Far Away"とか聴きたかった曲が聴けなくて(泣)」
林「僕が唸ったのは、新作で一番好きだったマイケル・ジャクソン風の“I Want You To Stay”をやって、その次にMJ(とフロエトリー)の“Butterflies”、さらにその次にMJの“I Can't Help It”を歌って、徐々にマイケルの曲に遡っていって種明かしをしてくれたところです。やっぱりそうだったんだ、と。MJトリビュートですよね。心残りなのは新曲“Friends & Lovers”を聴き逃したこと。せっかくやるって予告してくれてたのに、メインのディアンジェロが気になって……」
S「ツイッターなどでも“新曲も歌うわよ!”って宣言してましたもんね。“Friends & Lovers”はワンコーラスだけ歌ってくれて“こんな感じの曲なんだけどどう?!”みたいなことを言ってました。終始トークも交えながら楽しい雰囲気でライヴをやっていて、これもまたラウンジならではの醍醐味ですよね。ピアノ弾き語りもよかったですし、彼女は元フロエトリーだなんて肩書きがいらないくらい一人のアーティストとして完成されてるなってのを実感しました」
林「そしてディアンジェロです。少し前にボナルーのフェスやBETアウォーズへの出演でも話題を呼びましたが、全米でのフル・ステージは10年ぶりということで、今回、僕ら渡米組にとっても最も期待値の高かった人です。ヨーロッパ・ツアーの評判もよかったですし、観る前から興奮状態だったのですが、会場からはそれほど歓声も上がらず、ディアンジェロもいつの間にかステージでジャム・セッションしてるような始まり方で、ええっ?と」
J 「身構える前にとっとと始まってましたね」
S「うーん、期待値があまりにも高すぎたから余計にそう思いましたよね。僕も今回の出演者の中で最も注目してましたし、Dの出演が決まったときには本当に嬉しかったですから。声が出てないとか衰えたとか、そういうブランクを感じさせるものは無かったんですけど、ただみんなが聴きたかったDではなかった」
J「少なくともこんなディアンジェロは期待してませんでしたよね。とはいえ、どんなディアンジェロを期待していたかというのも曖昧だったというのはあるんですが」
林「確かに(笑)。“Feel Like Making Love”とか“Devil's Pie”とかもタイトなファンクって感じでカッコいいんだけど、何故かグッとこない。クリス・デイヴとかピノ・パラディーノとかザ・ルーツのレイ・アングリーらのバッキングも問題ないはずだし、本人もギターやキーボードを操ってグルーヴを生んでたけど、何かグッとこない。淡々としているというか。お客さんの反応も薄く、まさかのシラケ・ムード……」
J 「確かに合唱を客席に煽っていくタイプの人じゃないし、とか、D様を目の前にしながら、自分に言い訳ばっかしていた感じでしたね。奇跡の瞬間は絶対にやって来るんだ、と自分に言い聞かせたりもしていたし。そんな違和感を取り除いて評価してみる、みたいなこともいざEMFという場で見てしまっていると、無理があるしなあ」
S「特にEMFだとソウル・クラシックでみんなで合唱したり、それこそさっきのSWVみたいにずっと変わらないヒット曲を歌ってくれた方がお客さんとしては嬉しいですからね。パフォーマンスとしてはよかったですから、これが仮にDじゃなく例えば他のアーティストだったらすごくファンクでかっこいいなーって思うでしょうし、決してDを全否定するわけではないんですが」
林「仰る通りだと思います。やはりアメリカでは10年間シーンに不在だったせいもあるのでしょうか。でもやっぱり、EMFに来るような黒人のお客さんは一緒に歌えないと満足しないから、そういう意味でディアンジェロは気持ちよく合唱できる曲がない、と(笑)。もっとも、ボナルーみたいなロック・フェスならOKだっただろうし、ラウンジのような小さいハコでやっていればまた印象も違ったのかもしれないですが……音楽マニアな兄ちゃんが何か凄いことやってる(けど、よくわからん)って感じで、EMFのお客さん的には置いてけぼりをくらった感じかな。ヨーロッパや日本だと、そこがカッコよく思えたりするのかもしれないですが」
S「今年のヨーロッパ・ツアーでは評判もよかったみたいですしね。僕、UKの音楽番組『レイター』にDが出演した時に“Cruisin'”とか歌ってるパフォーマンスがすっごく好きでDVDも何回も観たんですけど、あれくらいの規模でしっとり歌ってくれた方がやっぱり好きだなって思って。ギターを弾きながらよりも鍵盤を弾きながら歌ってる姿の方がやはりしっくりきますね」
林「理屈じゃなく、何かグッとこないというか……良く言えば“異彩を放っていた”という感じなのでしょうけど、個人的にはジャネットに似た(EMFゆえの)失望感だったかもしれません。途中で席を立ってしまったほどで。“Untitled (How Does It Feel)”はさすがに歓声が上がったようですが。“Brown Sugar”もやらなかったようだし、新曲の“Sugar Daddy”もサラッとやった程度だったとか」
J「そうでしたね。擁護論ももしかしたらあるのかもしれませんが、あれだけステージと客席との間に温度差が生まれるということはあの場のディアンジェロは少なくともエンターテナーとは言えなかったかな」
S「不完全燃焼な気分にはなりましたけど、何年も復活せず、もう見ることはできないんじゃないかとも思われたDの元気な姿を運よく見ることができたってことで自分の中でポジティブに収めておこうと思います。なんだかんだで新作が出るのも楽しみですしね」
J「それでも、ディアンジェロをこの目で見られたから、って今さらながらの言い訳も出てきがちなんですが(笑)」
林「それはありますね。で、そのディアンジェロの時間が、実はラウンジでのキンドレッド・ザ・ファミリー・ソウルとまるかぶりだったんですよね。今回は、何度か観てるキンドレッドはパスしてディアンジェロを選んだんですが、ディアンジェロを30分くらい観て途中からキンドレッドのステージに向かいました。僕が駆けつけると、ちょうどチャック・ブラウン・トリビュートという感じで新作『Love Has No Recession』からのゴーゴー曲“Going To The Go-Go”で盛り上がってました。その前には、お約束のメイズ“We Are One”なんかもやってたそうですが、まあ、このファティンとエイジャのダンツラー夫妻は、もうこれでもかぁーっ!という感じの、くんずほぐれつの歌合戦。夫婦で激唱、剛唱、猛唱。で、お客さんも大合唱。これぞライヴの醍醐味ですね」
J「林くん、流石の判断ですよ、それ」
S「エイジャはライヴ用にクール(?)なサングラス姿で登場。キンドレッドは大好きなのでフルで見たかった…!けれど、いつ見れるか分からないDと同じ時間ですと、やはりDを優先せざるを得なかったです(泣)。部分的にしか観れてないのですが、実際のところキンドレッドのパフォーマンスはこれまた凄く良くて! 歌の力も凄かったですし、二人が仲良さそうにしてる姿が見れたのも嬉しかったです」
林「この日は新作に参加していたレイディ・アルマも出てきたそうで、さらに〈Black Lily〉のMCだったリーヴァ・パーカーもステージに呼ばれて、〈Black Lily〉出演者の名前をシャウトアウトして、当時のフィリー勢の功績を強調してました。終盤は彼らのアンセム“Far Away”。もちろん大合唱で、最後はこれまた彼らのライヴ定番曲であるウィリアム・ディヴォーンの“Be Thankful For What You Got”でシメ。結局ディアンジェロより20分以上も多くやってたようで。ディアンジェロもキンドレッドも“ネオ・ソウル”として括られますが、キンドレッドは真にブラック・コミュニティに根差したソウル・ミュージックというか。逆にディアンジェロは非黒人に受ける(今となっては)わかりやすい黒さがあるというか、ソウル・ミュージックを超越した何かがあるということなのかもしれないですけど……僕は断然キンドレッド派です」
S「個人的に大好きな“Where Would I Be”も聴けて満足でした。この曲ってCDだとスムースであまり声を張らない感じなんですが、ライヴだと二人とも力強くてソウルフルで興奮しました。そういったライヴならではの新しい発見もありましたし、んーやっぱりフルで聴きたかった!来日希望です!」
■鉄板のアンクル・チャーリー
林「初日メインのトリはチャーリー・ウィルソン。もうMJBとともにEMFの常連になりましたね。自身のソロ曲、ギャップ・バンドのナンバー、ロジャーへのトリビュートなど、レパートリーも衣装替えのタイミングなんかも毎年ほぼ一緒で、お約束だらけのステージですが、これを観ないと落ち着きません」
S「オープニングはお決まりの“Party Train”で電車ごっこ(?)的な登場でしたね(笑)。チャーリーはこれだけ広いドームで歌っても圧倒的な存在感のある声。どれだけ熱唱しても声がかすれることもなく絶好調でしたね。アーロン・ホールを始め今もなお多くのフォロワーがいるだけあってやはり最強だなと」
林「個人的にはギャップ・バンドの“Yearning For Your Love”でドームが心地よい一体感に包まれるたびに、“ああ、今年もEMFに来れたんだぁ”と思ってしまいます。メイズが出ていた時の“Happy Feelin's”に近いものがありますね」
J「確かに、そうですね。あの感覚はブラック・ミュージックが好きな人には是非体感してもらいたいなあ。自分の言葉では何故か説明の難しい“この音楽が好きな理由”というものを一気に分かる瞬間ですよね。“Outstanding”で感じる幸福感もそれに似ています」
S「比較的新しい“There Goes My Baby”もすっかりチャーリーのテーマソングになりつつありますね。個人的には”Without You”が一番好きなんですけど、来日公演でもEMFでも歌ってくれなかったんですよー(泣)。ともかく初日のトリを飾るには相応しいステージでしたね」
J「“There Goes My Baby”は2008年のリリース直後のEMFの時にアンコールも含めて同じステージで二度歌った甲斐がありましたね。掟破りとは思いましたが、今や思い通りの、チャーリー・クラシックの一曲になってますものね。ディアンジェロ~チャーリーまではまた動かずにメインに集中してたんですが、正直、こうして話を聞いていると、見逃して悔やまれるステージも少なくなかったと痛感します。林くんと動けばよかったなあ。まあ、こんな悔しさが残るのも、いかにもEMFらしさといえば、らしさなんですけどね」
林「ハハハ。特にネオ・ソウル系が好きな僕にとっては、ステージ間の移動に悩まされた一日でした」
S「僕もおそらく初日が一番移動でバタバタしてたと思います(笑)。それでも林さんとはよくラウンジでバッタリ会ってましたよね」
林「そうそう、あと時間が前後しますが、この日の昼間、コンヴェンション・センターのセミナー会場では、〈Power Of Our Family & Love〉と題して、家族や兄弟姉妹の絆について語るという催しもありまして。ミシェル・ウィリアムズがMCで、メアリー・メアリーの姉妹やブラクストン姉妹、それにヴァネッサ・ウィリアムズと彼女のお母さんらが出席していろいろ語ってましたが、いかにもEssence誌らしい企画ですね。内容についてはあまりよくわからなかったのですけど(笑)」
S「コンヴェンション・センターに行くとスポンサーとなっている会社から試供品がもらえたり試食や試飲が出来たりで、音楽とは関係なくそれをもらいに来る地元のオバチャンで会場内はいっぱいでした(笑)。初日は僕が行った時はメアリーやSWVがトークイベントしてるところに遭遇したり、タンクがサイン会をしていたのでCDにサインしてもらったり。夜のコンサートだけでなくこうして昼間にも日本ではありえないくらい豪華な内容を楽しむことが出来ました」
(Day2に続く)