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コンピレーション

Soul Togetherness 2012

Soul 20123月にブログを始めてから早9ヵ月、2012年も残すところあと僅かとなってしまった。当初の予想通り(?)定期的には更新できず、8月以降はR・ケリーの新作について書いたきり3ヶ月以上放置し、11月になってEssence Music Festivalの座談会リポート3日分+序文をアップしたものの再び放置状態…。今年は、おかげさまで随分忙しくさせてもらいまして。まあ、皆さんお忙しいので、そのおこぼれが端くれの僕にも回ってきたのだと思いますが、レギュラーの雑誌や不定期の刊行物に加え、例年なら年間20本書くか書かないかだったCDのライナーノーツを、今年は一ヵ月に20本以上書く月もあったりで、物事をじっくり考える余裕がなかった。特にオリンピックあたりからアレコレとあり、ブログを書く時間がないというか気力ゼロ…と言いつつ、TwitterとかFacebookには仕事のネタ+αをちょくちょく書き込んでいたのだけど、原稿を書いた後にさらに文章を書くというタフさが残念ながら僕にはないようです(苦笑)。そんなこんなで、やはりブログはやらないほうがよかったのかなぁ…などと思い始めてもいる今日この頃ですが、年末進行も一段落したので再開してみました。

この時期になると、音楽ファンの皆さんは年間ベスト・アルバムなんかを考え始めているのではないでしょうか。国内外のメディアでも、あちこちで年間ベスト・アルバムの特集が組まれていたりしますが、僕も僅かながらいくつかのメディアで個人ベストなどに参加させてもらっています。最近ですと、ディスクユニオンさんが発行している『黒汁通信』の年間ベスト増刊号『黒汁大賞2012』に“黒ジリスト”のひとりとして今年も参加させていただくことに。黒汁マナー(って?)に則って、新譜・再発合わせた個人ベスト5を選んでいます。また、個人ベストではないですが、タワーレコードさん発行の『bounce』誌では、これまた今年も年間ベスト企画「OPUS OF THE YEAR」(R&B部門など)でアルバムに関するコメントを書いています。今後もまだいくつかあるのですが、今年はせっかくブログを始めたことですし、本ブログでもR&B/ソウルに限定した新譜/再発/シングルの個人ベスト10 と2012年のR&B総括みたいなのをやってみようかと考え中。まあ、自己満足以外の何物でもないですが、R&Bに限って言えば、それを専門に扱う(US R&Bを軸にした)日本のメディアは今や皆無なので、自己満足ついでにまとめておこうかと(予定)。

それにしても、いろいろな雑誌/メディアの年間ベスト・アルバムを見ていて、とても興味深いです。R&Bに関しては、僕の勝手な思い込みかもしれませんが、ロック・ジャーナリズム的価値観で選ばれたそれというか、レフトを気取った欧米の音楽雑誌の価値観が日本にも飛び火して…という感じで、オレンジ色の憎い奴(≠夕刊フジ)とか「消臭力」じゃない方の人の2ndがお約束のようにランクインしていて、へぇと思ったり。もちろん両作とも優れたアルバムだし、実際に今年の〈Soul Train Awards〉でも評価されたわけだけど、R&Bだけは相当な数の作品を聴いてるはずの自分からすると、それだったらあれも…と思うところもある。まあ、ここらへんのことは書き出すとキリがないので止めておきますが、評論家的なポーズをとるために世の風潮に歩調を合わせて、実際はそれほどピンときていないのに、その良さをあえて見出そうとしたり考え始めたりしたらそれは本心ではないと思うので、R&Bリスナーとしては尖がった部分を求めながらも保守的な感覚がベースにある僕のベストは、世間の評価とは少しズレたものになりそうです(既に発表済みのものも含め)。

で、今回は、そんな自分の正直な気持ちを代弁してくれているようなコンピを。UKのエクスパンションから毎年冬が近づくとリリースされる『Soul Togetherness』です。僕の記憶が正しければ第一弾が出たのが2000年。ということは、今回で13タイトル目になるのかな。モダン・ソウルをキーワードに、アーバンでスムーズなソウルを主力とするエクスパンションらしい感覚でその年に話題になった主にインディのR&Bやハウス、クラブ・ジャズ曲を70~80年代ソウルの曲も織り交ぜて収録しているのですが、これが僕の趣味とドンピシャ。特に2012年版の選曲は思いっきり僕好み。しかも今回は、R・ケリー“Share My Love”やアンソニー・ハミルトン“Woo”といったUSのメジャーどころまで入っていて、ソウルペルソナやクール・ミリオン、ジャザノヴァといったヨーロッパのクリエイター(・チーム)が作るダンサブルなナンバーたちの中に違和感なく溶け込んでいる。収録されているのは、必ずしもその年に発表された曲とは限らず、その年にフロアでヘヴィ・プレイされるなどした旧曲も含まれる。例えば、ロウレルの必殺メロウ・ダンサー“Mellow Mellow Right On”を引用したビッグ・ブルックリン・レッドの“Taking It Too Far”は4年ほど前に出ていた曲(これを収録したアルバム『Answer The Call』も好盤!)。どうやらここ2年くらいアンダーグラウンドなフロアで人気だったようで、実際、今年7月にニューヨークで観たヤーザラーのライヴでも開演前にDJがこの曲をかけていた。ネタに頼った曲とはいえ、これは文句なしに気持ちいい。

個人的に一番嬉しかったのが、UKではリール・ピープル・ミュージックと配給契約を結んだフィリーの姉妹デュオ、エイリーズが2010年にデジタル配信して話題を呼んだ爽快メロウなダンサー“Don't Give It Up”の初フィジカル化。70年代後半のテイスト・オブ・ハニーやマイケル・ジャクソンと繋げて聴いても違和感ない曲です。そして、KEMとのデュエットでも知られるデトロイトの歌姫モーリッサ・ローズ。彼女に関しては、アニタ・ベイカーのスピリットを受け継ぐ歌姫と勝手に思っていたのだけど、今回収録された“Thinking About You”をプロデュースしているのは、誰あろう、マイケル・J.パウエルその人であった。これまたスムーズなダンサー系の曲で、パウエルらしいジャジーでアーバンな作法とモーリッサの熱く深みを湛えたヴォーカルが見事な相性をみせる。他にも、ジェラード・アンソニーの新作『Ready To Live』からロニー・ロストン・スミスらをフィーチャーしたウェルドン・アーヴィンfeat.ドン・ブラックマン曲のカヴァー“I Love You”、来日公演も決まったソウル・ジャズ・シンガー、グレゴリー・ポーターの出世曲“1960 What?”のダンサブルなハウス調リミックス(Opolopo Kick & Bass Rerub)などなど、気持ちよすぎる全15曲。主義主張ありげな音楽を腕組んで考えながら聴くより、こういう方がずっと楽しいなぁ…という主義主張をしてしまいましたが、リハビリがてら書いてみました。これを機に、もう少し頻繁に更新していけたらなぁ…と思っています。


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Wonderland-The Spirit Of Earth Wind & Fire

Spirit Of EW&Fこ、これは…。我らが長岡秀星画伯によるアース・ウィンド&ファイア『太陽神』(原題『All ’N All』)の出来損ないみたいなデザインのジャケット。まあ、EW&F感は伝わってきますが(笑)…ってなわけで、今回は英エクスパンションから発売されたこのコンピレーションを。EW&Fの編集盤ではなく、EW&Fメンバー(フェニックス・ホーンズ含む)の外仕事にスポットをあてたコンピレーションだ。EW&Fメンバーが演奏やソングライティング/プロデュースなどで参加したEW&F以外のナンバーを20曲収録。昨年はEW&Fデビュー40周年を記念して、日本でもカリンバ・プロダクションの作品が紙ジャケで再発され、今年に入ってからはEW&F本体(コロンビア時代)の紙ジャケCDも発売されたが、なら、UKも黙っちゃいれらん!ということか。

で、ラムゼイ・ルイス“Tequila Mockingbird”に歌詞をつけてカヴァーしたディー・ディー・ブリッジウォーターの快活な疾走アップで幕を開けるこのコンピ。選曲/監修は、先日紹介したPIR創立40周年記念ボックスを手掛けたラルフ・ティー(およびポール・クリフォード)ってことで、これまた一筋縄ではいかない、ソウル・リスナーのツボを押さえた選曲になっている。当然ながらカリンバ・プロの楽曲も選ばれているのだが、例えばポケッツが“Got To Find My Way”、デニース・ウィリアムスが“The Boy I Left Behind”、エモーションズが“There'll Never Be Another Moment”という感じで、定番曲を外して隠れ人気のアーバン度高めな曲を入れてくるというこのセンス…まったく憎たらしい(笑)。4曲目にマイティ・クラウズ・オブ・ジョイ“Glow Love”(アル・マッケイ制作)が登場するなんて、マニアックだよなぁ。

ロニー・ロウズ、カルデラ、ヴァレリー・カーター、パウリーニョ・ダ・コスタなど、EW&Fの楽曲に何度か関わった人たちの収録は想定内として、フィリップがリード・ヴォーカルを務めたエイブラハム・ラボリエル(メキシコ出身のベーシスト)の曲やアル・マッケイ&フィリップ作の“Angel”を歌ったフローラ・プリムとかは普通なかなか入ってこない。チャカ・カーンの7インチ・オンリー(“What' Cha Gonna Do For Me ”のB面)だった“Lover's Touch”なんて、EW&Fに曲(“Getaway”など)を提供したビロイド・テイラー(S.O.U.L.の元メンバー)が書いているというだけで収録って、ここまでやりますか、という感じだ。たぶん一番ストレートな選曲はラムゼイ・ルイスの“Sun Goddess”だろう。が、これもシングル・ヴァージョンを用意するという周到さ。

曲ごとのクレジットには、どのメンバーが何で関わったかということまでキチンと書かれている。特にホーン・セクションに関してはフェニックス・ホーンズのメンバーに加えて、常連だったオスカー・ブラッシャーなんかの名前まで記されていて、もしやラルフ、「サックス&ブラス・マガジン」のEW&F特集号見たな?と思ってしまうほど(笑)。冗談ですが。全体を通して聴いて思ったのは、モーリス・ホワイトやフィリップ・ベイリーの個性はもちろんだけど、ラリー・ダンの洒脱なキーボード・センスやアル・マッケイのコロコロした軽快なグルーヴが引き立った曲が多いなぁということ。タヴァレスの“Love Uprising”とかグレイ&ハンクスの“Dancin'”なんて基本フェニックス・ホーンズのメンバーが関わっただけなのに、リズム隊までEW&F感があるという。あと、アルトン・マクレイン&デスティニ-やジーン・ハリスなど、スキップ・スカボロウが書いた曲も収録。個人的に大好きだったブルー・マジック“I Waited”はプロデュースがスカボロウで、フィリップがペンをとり、アル・マッケイがギター、ラルフ・ジョンソンがドラムスで参加しているのだけど、これもアル・マッケイ感全開だなぁ。そういえば、エクスパンションからは以前スキップ・スカボロウの作品集『Skip Scarborough Songbook』が出ていたけど、あれとは選曲がかぶっていない。

さて、EW&Fといえば、去る5月17日に一夜限りの来日公演(@東京国際フォーラム)を行った。もう1ヵ月以上前のことなので詳しく書かないけど、古参メンバー3人(ヴァーディン、フィリップ、ラルフ)を中心に、フィリップの息子たちを加えた現グループは、モーリスの不在を何とかカバーしつつ新たな道を歩み始めていて、これが実に清々しい。フィリップも、そりゃ全盛期のようなファルセットは出ないけど、かなり頑張っていたと思う。モーリス役を務めるデイヴィッド・ウィットワース(元14カラット・ソウル)がちょいと出しゃばりすぎ?な印象もあったが(笑)、今やこうするしかないというか。マイロン・マッキンリーらを擁するバンドも悪くない。後でいろいろなライヴ評を見たり聞いたりすると、「“September”最高!」「当時の思い出がよみがえってきて涙」という意見もあれば、「PAが悪い」「モーリスがいないなんてやっぱりEW&Fじゃない」という意見もあって、まあ、人それぞれ。どのアーティストのファンもそうだが、特にEW&Fのファンは、テクニカルなことにまで言及するマニアと、懐かしの曲が聴ければそれでOKというライトなファン(バカにしているわけじゃないです)の温度差が激しい(ように見える)というか。そんな感じだから意見もバラバラになるのは当然。予想通り、会場が最も湧いたのは“Fantasy”“September”“Let's Groove”の3連発。やっぱり日本では“ディスコのEW&F”なんですね。ちょっと自慢っぽく聞こえてしまうかもだけど、これが本国アメリカでのライヴ(僕の場合はEssence Music Festival、昨年の独立記念日コンサートwithザ・ルーツを観戦)だと、ダンス・ナンバーはそこそこの反応で、“Devotion”や“Reasons”といったスロウ・バラードで観客絶叫となる。ここらへんの違いはとても興味深い。

EW&Fとしては、今年秋、延び延びになっている新作『Now,Then & Forever』(著名アーティストたちが選ぶEW&F名曲コンピとのセット)を発表予定。それに先駆けて、来日時に新作用のインタヴューを行ったのだけど、5月の時点では、曲は録ってあるものの選曲も含めてまだ大半が未定という感じだった。でも、今回は先行シングル“Guiding Lights”でキーボードを弾いていたラリー・ダンも結構関わっているようで、往年のファンには嬉しいトピックがいくつかある。それまではこのコンピでも聴いて待っていましょう。…何だか最近ラルフ・ティーの提灯持ちみたいだけど、まあ、いいか。

soul_ringosoul_ringo  at 06:32トラックバック(0) この記事をクリップ! 

Philadelphia International Classics:The Tom Moulton Remixes

Tomちょっと間があいてしまった。書いておきたいアルバムが本当にたくさんあるのだけど、なかなか書く時間(というか気力ですね…)がない。新譜ではメラニー・フィオナ、サイ・スミス、SWV、ジョイ・デナラーニ(の英語詞盤)、キャリン・ホワイト、Kジョン、テイク・6などなど…と、今後取り上げる予定のものを忘れないように、ここにメモしておきます(笑)。リイシューはもっとあるのですが。

さて、前回は昨年デビュー40周年を迎えたEW&Fについて書いたが、今回は同じく昨年創立40周年を迎えたフィリー・ソウルの総本山、フィラデルフィア・インターナショナル・レコーズ(PIR)のリイシューについてサラッと。PIRといえば、一昨年に日本のソニーから未CD化のアルバムを含む再発が行われるも、昨年は日本も海外もPIRのリイシューに関してはほとんど音沙汰なし。

ところが今年に入って、米レガシー/ソニーからPIRのコンヴェンション・ライヴの模様を収めた『Golden Gate Groove:The Sound Of Philadelphia~Live In San Francisco 1973』が発売。このライヴ、あのドン・コーネリアスが司会進行役なんだけど、ちょうどドンが他界した頃に発売されたのは皮肉というか何というか。そして今年は英Harmlessも一年遅れでPIRの創立40周年を祝って数種のコンピをリリースする。で、まず届いたのが、トム・モールトンがリミックスしたPIR名曲からなるCD4枚組セット。わりと詳細なブックレット(英文ライナー)もついて3,000円以内で買えるお得盤だ。トム・モールトンがフィリー・ソウルをいじったものではフィリー・グルーヴの音源を使った『Philly Re-Grooved』が現時点で第2集(第3集も発売予定)まで出ているけど、PIR音源となると、曲が有名なぶんオリジナルとの違いが判りやすいというか、あの名曲がどうミックスされてるんだろう?っていう興味が二倍増し。

トム・モールトンは言わずと知れたリミキサー/エンジニア。ディスコ・ミックスの元祖的な存在で、リミックスという概念は彼の行為によって生まれたとされる。たまにDJと間違われることもあるが、この人はラリー・レヴァンみたいなDJが現場でプレイするためのダンス・ミックスをシコシコと作っていた、いわばテープ職人。もともとモデルをやっていた人で、ダンス・フロアでいい曲がかかるのに3分ぐらいで終わってしまい、それだと踊るには短すぎるっていうんで、インストの気持ち良い部分などを引き延ばしたりピッチを変えたりして長尺ヴァージョンを作り始めた…っていろんなところに書かれてますが。まあ、そういう意味では非常にDJ的なセンスを持った人ではある。オリジナルの楽曲にさらなる昂揚感を加えたモールトンのミックスはたちまち評判になり、70年代後期にはいろいろなレコードに〈A Tom Moulton Mix〉という文字が刻まれ、ブランド化。しまいにはプロデュースにも乗り出し、TJMというプロジェクトのレコードまで出してしまった。今も現役で、近年はブラン・ニュー・ヘヴィーズやクール・ミリオンらのアルバムをモールトンがいじった“リミックス・アルバム”なんかも出している。

そんなモールトンのPIRリミックス集。11分に及ぶMFSBの“Love Is The Message”など70年代にモールトンが手掛けた伝説的リミックスから、2011年に新たにミックスされた楽曲まで、計31曲が収められている。各曲の尺は6~10分くらい。ノーマン・ハリスのギターやらロニー・ベイカーのベースやらアール・ヤングのドラムスやらラリー・ワシントンのパーカッションやらが浮き彫りにされ、グイグイ迫ってくる感じがたまりません。それぞれの曲がどんな仕上がりなのかは実際に聴いていただくとして。ただ、“リミックス”とはいうものの、普通にPIRの名曲集としても楽しめる内容だったりもします。あと、どさくさに紛れてトランプスにいたロバート・アップチャーチのシングルが初CD化されていたりするのも面白い。Harmlessからは今後、PIR~TSOPの名曲を集めた40周年記念10枚組ボックスも登場予定! カレイドスコープのシングルなど初CD化の曲も多く、特にディスク3が凄い!と先日もFacebookで盛り上がったばかりなのだが、これはまた発売され時に熱く語り倒します(笑)。

ちなみに一連のフィリー・ソウル再発については、HMVさんのサイトでも特集されているので、そちらもどうぞ!



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Diggin' Kalimba~Tribute Mixed by MURO

EW&F×MUROジャケット写真取り上げたいアルバムは山のようにあるのだけど、今回は取り急ぎ告知的なものを。昨年デビュー40周年を迎えたアース・ウィンド&ファイア(EW&F)について、だ。昨年から今年にかけて、EW&F及びカリンバ・プロダクション関連の再発がソニー・ミュージックで行われ、今年の夏前には著名アーティストが選ぶEW&Fの名曲ベストを含んだ新作『Now Then & Forever』のリリースも予定されている(新曲“Guiding Lights”は発表済)など、彼らの周辺が騒がしい。

そんななか一連のリイシューの最後を飾ったのが、3月7日に一挙15タイトル発売となったEW&Fコロムビア時代のアルバム群。当時の日本盤ジャケットや帯を忠実に再現した紙ジャケ/Blu-spec CD仕様(DSDリマスタリング)での再発で、アルバムのベーシックな解説を金澤寿和氏と僕が手分けして書いた。加えて解説部分には、EW&Fに縁のある著名人のコメントも掲載。『All 'N All』(77年)など5枚のジャケットを描かれたイラストレーターの長岡秀星氏などにインタヴュー(コメント取り)を行ったのだが、そのうちのおひとりで『Head To The Sky』(73年)にコメントが掲載されたのが、King Of Diggin'ことDJのMURO氏。NYのハーレムでEW&Fの“Reasons”を聴いた時の衝撃など、興味深いお話をしていただき、取材も非常に盛り上がった。

その取材中、EW&Fのリミックスの話になり、そういえばSoul Source監修の『Soul Source~Earth Wind & Fire Remixes』(2002年発売)に意外にも(?)MURO氏が参加していなかったことを指摘。すると、「あれ、僕もやりたかったんですよ」とMURO氏。そこで、再発盤購入者のためのプレゼント企画を考えていたソニーの担当ディレクター氏に、「(リミックスではないが)MUROさん選曲のEW&FミックスCDを聴いてみたい」と提案したところ、MURO氏も「ぜひやりたい!」という流れに。かくして、いろいろな手続きを経て、MURO氏によるEW&F史上初となるオフィシャル・ミックスCD『Diggin' Kalimba~Tribute Mixed by MURO』が完成した(詳細はココで)。

ひと足先にラフを聴かせてもらったが、当然ながらMUROワールド全開の選曲&流れ。基調となるのは“On Your Face”的な明快さ、かな。ファンキーでキャッチー。EW&Fだけでなく、エモーションズやポケッツ、デニース・ウィリアムズ、DJ・ロジャースなどカリンバ・プロの曲も選ばれている。必携!…と言いたいところだが、先に少し触れたように、これはEW&Fの紙ジャケCD全15枚購入者のみにプレゼントされる非売品。そんな誰もが手にできないものを紹介するなよ…という声も飛んでくるかもしれないが、まあまあ、こういうこともありますよ。このミックスCDのために全部買いましょう!とは言いません。けれど、自分が関わった云々は別にして、今回の紙ジャケCDは永久保存盤となるはずの決定版。これからEW&Fを聴いてみよう/アルバムを揃えたいという方は、この機会に15枚ゲットしておいても損はしないと思う。何だかメーカーの回し者みたいだけど…仮に僕が学生でEW&Fのアルバムを持っていなかったらバイトして買ってたと思います。ミックスCDの応募締め切りは4月25日。

さて、そのEW&F、既に各所で報じられているように来日公演(詳しくはコチラ)が決定した。5月17日(木)、東京国際フォーラムで一夜限りのライヴ。ちょっと前にツイートもしていたのだけど、この日は70年代中期EW&Fのブレーンだったチャールズ・ステップニー(76年没)の命日にあたる。メンバーなどの詳細は未定だが、モーリス・ホワイトは不参加だろう。EW&Fとしての来日公演は2009年12月の公演以来2年半ぶり。個人的には、一昨年のEssence Music Festival、昨年7月4日のフィラデルフィアでの合衆国独立記念祭コンサート(この時のバック演奏はザ・ルーツ!)と、2年連続でEW&Fのライヴを観ているのだけど、フィリップ・ベイリーの息子(Jr.)もヴォーカルに加わったステージはなかなかのもの。モーリス不在は確かに寂しいけど、それはもう仕方のないこと。現在進行形のEW&Fを楽しみたいところだ。

ちなみに、MURO氏とは、また別のお仕事も一緒にさせていただいた。これは改めて紹介したいと思っています。



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