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Essence Festival 2013:Family Reunion Day(7/4)

Family今年もEssence Festivalに行ってきた。毎年、フェスの前日もしくは前々日にニューオーリンズ入りするようにしているのだが、今年も前々日に現地入り。というのも、本番前日に野外フリー・コンサートがあったから。昨年はディギー・シモンズなんかが出た前日のプレ・イヴェント〈New and Next〉(若手や新人アーティストの紹介を目的としたコンサート)が評判を呼んだからなのか、今年はさらに大がかりなイヴェントを仕掛けてきた。

〈Family Reunion Day〉と銘打たれた今回のプレ・イヴェントは、家族や同胞がそのルーツを確かめ合うことを目的として、同時に7月4日のアメリカ独立記念日をお祝いしましょうというもの。おそらくEssence Fest.では初めてとなる試みだ。会場は、ミシシッピ川沿いの広場、ウォールデンバーグ川岸公園。コンサートをメインの催し物として、周囲でクッキング・コンペティションやバーベキュー、ゲームなどが行われ、キッズ広場も設けてある。511入場は無料で、Essence Fest.を観にやってきた人たちだけでなく地元の人たちも家族連れで楽しむことができるようにした、ニューオーリンズ市あげてのイヴェント。Essence Fest.開催をキッカケに若い世代に(ブラック・)カルチャーを伝えていくという目的もあるのでしょう。もちろん、参加者は、Essence Fest.の会場がそうであるように99%がブラック・ピープル。
 

コンヴェンション野外イヴェントは午前11時からということで、その前に、近くのコンヴェンション・センター(Ernest N. Morial Convention Center)で行われているフェスのオープニング・セレモニーに出席。会場に着くと、いきなりマスター・Pが息子ロミオと娘シンフォニークの3人でステージに登場し、驚く。そして、ここがニューオーリンズであることを改めて実感する。P1050495野外イヴェントと連動し、“家族の絆”をテーマにマスター・P親子が終日ホストを務めるということで、地元を代表する模範的なファミリーとして親子ともども優等生的なスピーチを行っていた。内容はよくわからなかったが。

本会場のウォールデンバーグ川岸公園に移動すると、ライヴ前のステージでサウンドチェックをやっていた。そのときちょうど流れてきたのが、メイズの“Golden Time Of Day”。P1050515ミシシッピ川沿いで、午前の温かな日差しを浴びながら大音量で聴くメイズ……これはたまらない。このライヴ・ステージと背中合わせになっていたのがクッキング・ステージで、ここで料理(ソウルフード)コンテストが行われた。実は早い時間はライヴよりこちらのクッキング・ステージの方が盛り上がっていて、コンテスト出場者の自慢のソウル・フードをタダで食べられるとあって大行列。けれど、自分の目的は夜まで続くコンサート。有名・無名あわせて10組近くのアーティストのライヴが観られる、しかも多くは日本に来たことがない人たちということで希少価値も高い。ライヴの主な出演者は次の通り(順不同)。


Gina Brown、Brass-A-Holics、Tweet、Water Seed、Stooges Brass Band、Biz Markie、Doug E.Fresh、Cupid...

P1050503


アーティストひと組につきパフォーマンス時間は40分~1時間程度。早い時間帯には、上記以外にも地元の若手ヴァイオリニスト、苦節ン十年なブルース・シンガーなどジャンル問わずいろいろ出てきたが、個人的に観たかったのはトゥイートとウォーター・シード。結局、どちらともフルで観ることができたが、軽くアルコールの入った状態で、ライヴ・リポなんか書くつもりなく観ていたので、以下、ユルい雑記になります。

P1050536R&Bファン的に、まず目に留まったのはジーナ・ブラウンというニューオーリンズをホームとしている女性シンガー。2012年に『G's Spot』というサザン・ソウルの伝統を受け継いだアルバムを出していて、ちょっとハスキーで情熱的な声がグラディス・ナイトなんかとも比較されている(というより80年代以降のティナ・ターナーに近いかも)。普段はアナザ・レヴェル(Anutha Level)というバンドを率いて活動しているようで、今回もそのバンドとともに登場。青字で「GB」と書いてある黄緑のTシャツを着て、大きなお尻とふくよかな胸をブルンブルンさせながら歌うわけですが、そんなダイナマイト・ボディから繰り出される歌声はゴスペル上がりの南部女性らしいパワフルで包容力のあるそれ。アレサ・フランクリン“Rock Steady”のカヴァーが実によく似合う。ルーファス&チャカ・カーン“Sweet Thing”でもブラック・ピープルのお客さんのハートをガッシリと掴んでいた。HBOのTVドラマ・シリーズ『Treme』にアーマ・トーマスのバック・シンガーとして出演したこともあるようで、なるほど。

その後、順番は前後するが、2組のブラス・バンドを観た。P1050626いや、あまりちゃんとは観てなくて、その場に居た、という感じだったのだが。ひと組はストゥージズ・ブラス・バンド。ニューオーリンズ音楽ファンにはそれなりに知名度があるバンドで、スタジオ・アルバム1枚とライヴ盤を出している。まともに聴いたことがなかったので、シャープな音を出す、ガッツのあるバンドだなぁ……という程度の感想しか出てこない。個人的に興味を惹かれたのは、もうひと組のブラス・ア・ホリックス。ブラバンとゴーゴーを合体させた“ゴーゴー・ブラス・ファンク”を標榜して2010年に結成されたバンドで、ニューオーリンズの無料音楽誌『offBEAT』で今年のEssence Fest.を特集していた号の表紙を飾り、3ページにわたって大々的に特集が組まれていたこともあって気になっていたのだ。しかも、キーボード(オルガン)はケイコ・コマキさんという日本人女性。故マーヴァ・ライトのバックでも演奏していたことがあるという。P1050542ゴーゴー×ブラバン。まあ、兄弟みたいな関係にある両者だから親和性は高く、彼らの曲は全然知らなかったけど、とてもファンキーで力強く、チャック・ブラウンのライヴを観ているような感じで踊って楽しんだ。今後、彼らには注目していきたい。




トゥイートが登場したのは午後3時半頃だったか。パナマ帽をかぶいて出てきた彼女、40代前半にして孫もいるおばあちゃんだったりするのだけど、そんなふうには全く見えず。P1050560アコースティック風のスロウ“Smoking Cigarettes”なんかをブルージーに歌う姿はレコードでの印象より若干シブめだったものの、“My Place”などでのチャーミングで涼やかな歌唱はイメージ通り。南部のレイドバックした空気がよく似合う、まさにサザン・ハミングバードという呼び名がピッタリのソウル・ウーマンだった。早すぎた(?)ブギー・チューン“Boogie 2nite”をシャウト交えて熱唱する姿は、現代のグウェン・マックレーといった雰囲気も。「みんな聴いてくれた?」と言って最新EP『Simply Tweet』の宣伝もして、アレサ・フランクリン“Day Dreaming”を歌ってくれたのも嬉しかったなぁ。まさしく白昼夢。バックが生バンドじゃなかったのが残念だったけど、トゥイートのライヴ初体験ということで贅沢は言いません。ライヴ中、すぐそこのミシシッピ川では蒸気船(ナッチェズ号)が汽笛を鳴らしながらクルーズに出かけていたりして、船に乗ってるわけじゃないのに何だかゴージャスな気分。

P1050581トゥイートに続いたのがウォーター・シード。ニューオーリンズで結成され、アトランタにも拠点を置くかたちで活動する男女混成のソウル・ジャズ・バンドだ。2000年代半ばに自主制作盤でデビューし、2013年に『Wonder Love』というミニ・アルバムを発表。ニューオーリンズらしいプリミティヴなグルーヴも交えたクールで洗練されたジャジー・ソウルとでも言うか、ロバート・グラスパー云々の流れでも聴いておきたい一枚なのだが、その続編となる『Wonder Love 2』が間もなく発表されますよ、というタイミングでの今回の出演だった。このグループといえば、リード・シンガーとフルート奏者のふたりが女性。特にフルートを大きくフィーチャーしているあたりは、ジャズ・ファンク的な音楽性も含めボビー・ハンフリー(マイゼル・ブラザーズ的なそれ)を意識していると思う。『Wonder Love』というミニ・アルバムのタイトルからも察しが付くようにスティーヴィ・ワンダーからの影響も色濃く(そういえばボビー・ハンフリーはスティーヴィの“Another Star”におけるフルート・ソロでも有名)、今回のステージではミニ・アルバムでカヴァーしていたスティーヴィの“Don't You Worry Bout A Thing”も披露。そんな光景を目にすると“ニューオーリンズのインコグニート”なんて言いたくもなる。途中でジョン・ビブズという、インディR&B好きにはわりと知られている、エリック・ロバーソンを逞しくしたようないい声を持つ男性シンガーがゲストで登場。P1050595W・エリントン・フェルトンとの共演曲も出していたりするキャリア10年超の彼とデュエットしたラテン風味の曲が『Wonder Love 2』収録の“Build Me Up”であったことは帰国後に知ることになるわけだが、いや、このジョン・ビブズ、いいシンガーですよ。熱中症になりそうなほどの猛暑の中、涼しい風を運んでくれたウォーター・シード。ちなみに、結成メンバーの鍵盤奏者ジェレミー“J・シャープ”クランプはFacebookで日本の音楽関係者/リスナーに「友達リクエスト」を送りまくっており、自分の「友達」の多くもジェレミーと「友達」になっていた(笑)

P1050605日が傾き始めた頃、満員電車並みに混みあう会場を沸かせたのがビズ・マーキー。シェリル・リン、シック、アース・ウィンド&ファイア、マイケル・ジャクソン……と、お約束のオールドスクール・ソウルをゴッシゴシにコスった後、マイクを握ってヘタウマな歌を披露するというビズの十八番全開で、その愛されっぷりに、この人の偉大さを改めて噛み締めた。案の定(?)、一番盛り上がったのは“Let Me Turn You On”だった、かな。実はこの途中に、ニューオーリンズ名物のスコールに見舞われたのだが、そこで僕が折り畳み傘を開いたとたん、5人くらいの若者が雨宿りをしに強引に入ってきた。うち、20歳前後のスタイル抜群の女の子は、「雨に濡れると(ストレートにしてる)髪が乱れちゃうのよ」とか言い訳しながら体を密着させてくる。一方で、反対側から入ってきたイグジビット似の兄ちゃんは、人の傘で雨宿りしながら吸いまくり、目をトロ~ンとさせながら傘の中でナンパを始め……そのBGMがビズ・マーキーってのも、まあ悪くない(笑)。P1050624雨が止むと5人は蜘蛛の子を散らすように去っていった……。その後は、確かダグ・E・フレッシュが登場したのだが、体力も限界、カメラや携帯の電池も切れかかっていたので、トリのキューピッドに備えて、いったんホテルに戻った。ダグ・E・フレッシュはほぼ毎年、行く先々で何故かパフォーマンスを観ているし、実際にこの数日後にもコンヴェンション・センターで観ることになった。

P1050699で、完全に日が暮れたところで登場したのがキューピッド。ステージ前の広場は身動き取れないほどの人だかり。これだけ見てもキューピッドが、いかに南部の黒人たちに支持されているかがわかる。ハイ・ファイヴ“I Like The Way”、マーヴィン・ゲイ“Let's Get It On”、メイズ“Before I Let Go”と、DJが皿をスピンするようにオールドスクール・ソウルを歌って会場を盛り上げる。で、お客さんは老若男女が一体となって大合唱&ラインダンス。予想通りメイズ“Before I Let Go”はイントロが流れた瞬間から絶叫で凄かったが、「待ってました!」という感じで最高の盛り上がりを見せたのが、彼の十八番“Cupid Shuffle”。♪To the right, to the right,to the right,to the right ♪To the left,to the left,to the left,to the left……と皆が踊る中、写真を撮ってたら周りにいた3人に両腕、腰を掴まれ、強制的にステップを踏まされることに。毎年、Essece Fest.の会場で同じような体験をしているが、踊れない人を見ていられないのだろう…アジア人の自分にも文字通り手取り足取りダンスを教えてくれる。で、最後はみんなで握手&ハグ。こうやって現地の人と一瞬でも仲良くなれるというのは、やはり嬉しいですね。P1050706彼らと仲良くなるには、まず“Cupid Shuffle”のダンスを覚えることかな(笑)。彼のステージもこれまでに何度か観ているが、歌が特別凄いわけではない。R&Bシンガーとしてはわりと平凡だけど、ノリとキャラで聴衆を引っ張っていく。R・ケリーがいなくなっても困らないがキューピットがいなくなっては困る……南部の人たちにとってはそんな存在なんだと思う。

P1050755キューピッドのショウで大団円を迎えた後は、独立記念日を祝した花火大会。2年前にフィラデルフィアで体験した花火大会同様、米国民に意識高揚を促すようなナレーションと愛国心に溢れたポピュラー・ソングが次々と流されるなか、ミシシッピ川のあちこちから大きな花火が打ち上げられる様は、米国民でないながらも異国のお祭りとして単純に楽しめたし、いいライヴを観た後だったので感慨もひとしおだった。
9時間近くに及んだ〈Family Reunion Day〉。これだけで今回の旅を終えたとしても十分なくらい。だが、本番は翌日からの3日間。続きはコチラで。




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