トップページ » Essence Music Festival 2012:Day 3(7/8)

Essence Music Festival 2012:Day 3(7/8)

座談会:JAM×SHIROW×林 剛P1040357

Main Stage
Kirk Franklin(6:15PM)
Fantasia(7:15PM)
Anthony Hamilton(8:35PM)
Aretha Franklin(9:40PM)
Special Weekend Encore Performances~Chaka Khan(11:00PM)


Super Lounge
Coca-ColaLuke James(7:00PM) Estelle(8:30PM&10:00PM)
McDonaldAlex Boyd(7:45PM) Carl Thomas(9:00PM) Melanie Fiona(10:30PM)
FordBridget Kelly(7:30PM) Raheem DeVaughn(9:00PM&10:30PM)
Verizon WirelessThe Stooges Brass Band(7:15PM) Eve(8:45PM&10:15PM)
※時間は当初の開演予定時間です。

■日曜日、まずゴスペルを浴びる
林 剛(以下 林)「3日目、最終日です。この日は日曜ということで、昼間にはコンヴェンション・センターでゴスペルのパフォーマンス&説教が行われました。毎年あるイヴェントなのですが、今年はEMF本編に倣った〈Power Of Your Spirit〉というテーマで、メアリー・メアリーとフレッド・ハモンドを称えるショウを中心とした構成でしたね。メアリー・メアリーに捧げるパフォーマンスでは、アンバー・ブロック、キム・バレル、トラメイン・ホウキンズがそれぞれ自慢の喉を披露。キム・バレルのパートでは、緩急つけて熱唱するキムの歌にメアリー・メアリーのふたりが大泣きしてて、意味はよくわからなかったのですが感動的でした。その後、マーヴィン・ワイナンズの説教があって、フレッド・ハモンドに捧げるパフォーマンスでは、イスラエル・ホートンがギター片手にお馴染みのポップ~ロック路線のステージで盛り上げて……と」
P1040912SHIROW(以下S)「コンヴェンション・センター内にはいくつかステージがあるのですが、会場内では各ステージでゴスペルやダンス・コンテストもある一方で、ジャズやボサノヴァのライブもあったりと、EMF最終日ということもあって盛り上がってましたね。ミッシェル・ウィリアムス、カール・トーマス、ケニー・ラティモアらがミート&グリート(いわゆるサイン・握手会)をやっていたので僕はそちらに参加してきました。ミッシェルは本当にかわいらしいというかお茶目なキャラで、会ったら余計に好きになりましたね。カールがラフな上下ジャージ姿で登場したのに対し(笑)、ケニーはいつでもシャツ&ハットでクールにキメていてさすがだなと思ったり」
「SHIROWさん、一緒に記念写真撮ってましたよね(笑)。そんなSHIROWさんを半ば強引に誘って観たのが、ゴスペル会場でのヨランダ・アダムスだったんですけど」P1040936
S「ヨランダのパフォーマンスは感動的でした!」
「ヨランダの歌はもともと繊細というか、爆発するようなタイプじゃないんだけど、聴き手の心にスッと入り込んできて、ジワジワと熱くさせますよね。そして、そんなイヴェントの流れを継ぐかのように、最終日、EMF本編のメイン・ステージ一発目はカーク・フランクリン。この人はエネルギッシュでクワイアと客席を煽りまくりますが、近作『Hello Fear』からのタイトル曲や“I Smile”はさすがに歓声が上がりましたね」
S「1曲目からいきなり“Looking For You”をブチかましてくれましたね。まだ開演したばかりで空席が目立ってたんですけど、一気に会場の熱気も上がり、掴みはバッチリといったところ。日本でもゴスペルスクールでよく歌われているという“My Life Is In Your Hands”も感動的でした。会場内はどの曲も大合唱で、ドーム内が大きな教会のようでしたね」
P1040968JAM(以下J)「いや、この掴み方は凄かったですね。ただ、そんなこちら側の印象は実に表層的なもののハズで、昨日のメアリー・メアリーにしてもそうですが、ゴスペルであること、それはつまり彼らのステージングがパフォーマンスであるのと同時に神へのサービスでもあるので、その感覚を抱くにはお恥ずかしながら不適格なんですよね。そんな不適格さを思い知るためにもベタで見させていただきました」
「カーク、YSL(イヴ・サン・ローラン)のTシャツを着てましたが、何か関係があるのでしょうか(笑)」
J「カークさん、あなたも不適格なのでは(笑)」
S「YSLのロゴが大きくプリントされてたので、見ていてどうしても気になりましたよね。きっと何も気にせず着てたんでしょうけど(笑)。カーク自身は歌うわけではなく、とにかくステージ上をちょこまかと動き回ってたんですが、ひとつひとつの言葉や動作が一所懸命で心に伝わってきましたね」


■ファンテイジアに降参!

「この日は早い時間から各ラウンジで新人系アーティストのパフォーマンスもありまして。まず観たのがルーク・ジェイムズ。ルーク&Qとしてシングルを出すもアルバムを出せずに終わった、あのルークです。ビヨンセ“Run The World(Girls)”やメラニー・フィオナ“4PM”のミュージック・ヴィデオに出演、しかもニューオーリンズ出身という、ある意味EMFへの出演条件が整っていた人ですが、この人はマジで歌えますね。シングル“I Want You”で聴かせた力強いテナーと炸裂するファルセットはステージでもバッチリ。最初はガラガラだったラウンジも徐々に埋まってきて、観客の心を掴んでました」
P1040980S「オープニングにはケニー・ラティモアが登場し“これから出てくるヤバいシンガーを紹介するぜ!”と言ってルークを紹介。ケニーは今年のEMFの出演者ではないにしろ、他にもいろいろな場面で登場しましたね。そろそろ新作も出るみたいですし、今回のEMFへの参加が来年の出演に繋がればと期待しています。ルークは特に注目していたわけでもなかったのですが、生で聴いてみて一気に好きになりました。今風の踊れるエレクトロ路線でもなく直球R&Bですね。ルーク&Qの頃からを考えればキャリアも長いですし、苦労してるだけのことはある歌声だと思います。ビヨンセのツアーにも参加しているようですし、いい形でリリースされることを願いたいですよね」
「ミント・コンディションの“Breakin' My Heart(Pretty Brown Eyes)”のカヴァーにもヤラれました。ミントのこの曲は、前日のドゥルー・ヒルといい、本当に人気がありますね。今や90年代R&Bのアンセム」
J「カークから(次の)ファンテイジアとメイン・ステージを連続させてしまったために、ルークを諦めたこと、これは悔いが本当に残ってるんですよね……トホホ」P1040992
「ブリジット・ケリーも楽しみにしてまして。ジェイ・Z“Empire State Of Mind”におけるアリシア・キーズの代役をライヴなどを務めて熱唱してたコです。当初はケリ・ヒルソンっぽいイメージを抱いていたんですが、実際観ると結構な姉御系というか、ロック・バンドのフロントに立つ御姉ちゃん風。ラウンジがガラガラだったのが寂しかったですが、時折ハスキーになるエモーショナルな歌いっぷりで、歌も安定している。一曲聴いただけで移動しちゃいましたが」
J「林くんは会場内ツアーのプロでございます(笑)」
「プロ認定、ありがとうございます(笑)。で、次も新人のステージで、アレックス・ボイド。いわゆるブルー・アイド・ソウル・シンガーで、わかりやすく言うとロビン・シックをイナタくしたような感じでしょうか。やはりまだ知名度が低く、会場ガラガラでしたが、ギター抱えて一所懸命黒く歌おうとしてましたね」
P1050024S「アレックスは曲にしても声にしても黒さは薄めな印象だったんですけど、“I Wish I Knew”という曲が好きだったので調べてみたら(ミュージック・ソウルチャイルドなどを手掛けてる)アイヴァン・バリアス&カーヴィン・ ハギンズがプロデュースしてるとのこと。アレックスは他にもオハイオ州シンシナティで開催されているブラック・ミュージックの祭典〈Macy's Music Festival〉にも今年出演したようですし、あくまでポップスとしてではなくブラックとして売り出そうしてるみたいですね」
「そうみたいですね。ダニー・ハサウェイとかがアイドルみたいで。2名ほど熱狂している黒人のお客さんがいて、とりあえず安心しましたよ(笑)。アイヴァン&カーヴィンが手掛けた“I Wish I Knew”はいい曲! アルバムも楽しみだなぁ。で、ラウンジの新人をひととおり観終えて、メインのファンテイジア。2年連続での出演です。今年もちょっとしか観てないんですが……本人はいつも通りガムシャラに激唱。猪突猛進型というか(笑)、熱くなりすぎて客席に入り込んでいく、衝動的とも言えるパフォーマンスが凄いです。“Bittersweet”は今や彼女のクラシックですが、これは本当に素晴らしい」P1050009
J「ファンテイジアは日本でも観逃していたので、EMFで満喫できたことがとにかく嬉しかったです。もう一挙手一動足を観逃すまいと、そしたら結構動きがソウルフルに乱暴で。でも、そんなエモーショナルなところに彼女の素が見えた感じがして、凄ぇなあと思いました。林くんの言う通り、“Bittersweet”は問答無用に素晴らしかった」
S「ファンテイジアはいつも登場と同時に靴を脱いで裸足になってから歌うというお決まりのアレがあるんですけど、今回もやったんでしょうかね(笑)。ステージから客席が遠かったのでそこまで細かく確認できなかったのですが。数年前にNYのブロードウェイで行われた主演ミュージカル『The Color Purple』や昨年の来日公演でも彼女の生の歌声は聴いていたので、CDで聴く以上にもの凄く歌える人だということはわかってはいたのですが、今回も圧倒的な声量。確実な情報だと言い切れませんが、なんでもウワサによるとこの人はリハーサルをやらずにいつもぶっつけ本番で歌うらしいんです。それでいてあの声量。心の底から叫ぶように歌う感じはメアリーJ.ブライジのそれとはまた違った感動があって、聴いててなんだか胸が熱くなりました。余計なお世話かもしれませんが彼女はやっぱりショートヘアが似合いますね(笑)」
P1050010「髪の毛、今回は伸びてましたね。ウィッグだったのかもしれませんが。近年のステージでお約束のようになっているレア・エッセンス“Overnight Scenario”からソウルIIソウル“Back To Life”の流れも相変わらずで、この人も客の沸かせ方を知ってるなぁという感じですね。あと、ゴスペルのヴァショーン・ミッチェルがゲストで出てきて、彼のヒット“Nobody Greater”を歌う場面もありましたけど、ファンテイジアは母親のダイアンと一緒にヴァショーンの曲に参加していたんですね」


■もてなし上手な(?)シンガーたち
「その後ラウンジではエステルのショウがありました。2008年のEMF初出演の時は結構空いていたラウンジも、今や超満員。“Pretty Please(Love Me)”から新作『All Of Me』でジャネル・モネイとやってた“Do My Thing”という60sモータウン調ナンバー2連発の後、スプリームス“You Can't Hurry Love”へと繋ぐ展開に持っていかれました。スプリームスのカヴァーはフィル・コリンズのヴァージョンでも親しんできたはずのUK出身者ならではというか」
P1050037J「2008年のEMFのステージは僕も観ていて、無論、他のステージとのバッティングということはあっても、“American Boy”のヒットの後なのに、客ってこんなしかいないの? 恐ろしや、EMF……と感じたのをよく憶えています。でもライヴは一切手を抜かず、全力でやりきってかなり感動したんですよね。だから、今回の状況は本当に喜ばしかったです」
S「エステルは僕も前半しか聴けてないのですが“Do My Thing”はノリもよくて盛り上がりましたし、今後もずっと定番曲になりそうですよね。 スプリームスのカヴァーはUKでのそんな経緯も意識していたとは気がつかなかったです。後半ではヒット曲の“American Boy”なども歌ったみたいで、これも凄く盛り上がったそうで」
J「もう2008年のことは思い出す必要もなくなりました」P1050038
「そうですね。本人も自信に満ち溢れてましたし。結局前半しか観られなかったので、7月下旬の来日公演で観直したんですが、セットリストはほぼ一緒だったみたいです。UKブラックな出自を露わにしたレゲエ・ベースの最新ダンス・ミュージックという感じで、そこにメアリー・J・ブライジ(MJB)への憧憬が加わったパフォーマンスというか。MJB“Real Love”のカヴァーは定番でしたが、今回はそこから“Break My Heart”に繋がる展開とかが見せ所だったのかもしれません。あと、EMFではジャクソンズ“Blame It On The Boogie”のカヴァーもやったそうですが、あれ、曲の作者がイギリスのミック・ジャクソンってことで、エステル、徹底してます。凄い母国愛!」
J「筋が通ってるんですよ、彼女」
「ラウンジでは、今回唯一のヒップホップ・アクトとなるイヴも盛況でしたが、僕はそれを歩き観しながらメインのアンソニー・ハミルトンに。アンソニーは、10年くらい前はディアンジェロのバック・ヴォーカルやってたのが、彼も今やメインで客席を沸かせる大物ですよ。大きな会場をゆったりとしたチャーチなグルーヴで包み込む感じがたまらないです。“The Point Of It All”なんかグッと胸に沁みました」
P1050086S「イヴは全く観られなかったのですが、アンソニーはラウンジで歌おうがメイン・ステージで歌おうが関係なく客を引き付けられるくらい本当に声に説得力がありますよね」
J「アンソニーは無茶苦茶デカイ存在になりましたね。やっぱり自分だけの音楽観を持っている人は強いんだな、と感じました」
「比べるのもお門違いかもしれませんが、ヴォーカルの説得力はディアンジェロより何倍もあったような気がします」
J「林くん、やっぱり比べてしまいますよ。結局は何をリスナーに与えてくれるかですから、その点アンソニーのもてなしは文句なかったと思います」P1050081
「では堂々と言いましょう、ディアンジェロより断然凄かった、と(笑)。で、実はそのアンソニー・ハミルトンの時間帯にラウンジでやってたのがカール・トーマス。僕は行ったり来たりしてたんですが、どうでした?」
S「カール・トーマスはデビュー時からもう大好きでして。アンソニーのライブは過去に観たことがあったからっていうのもナンですが、カールのライヴはアンソニーの時間を削ってでも観たかったので、ほぼフルで観てました。贅沢な選択肢! 昼間にコンヴェンション・センターでカールと話した際に“あなたのライヴを観るために日本から来たんだよ”なんてわざと大袈裟に言ってやったのですが(笑)、あながちそれもハッタリではないくらい楽しみにしていました。昼間はジャージ姿でしたが、さすがにライヴではスーツでビシっとキメてましたね。新作からの“Don't Kiss Me”とかも良かったんですけど、1stからの“Emotional”や“Summer Rain”はもう本当に絶品。途中で“今日はオレの友達を紹介するぜ!”なんて言うもんだから、まさかのサプライズ・ゲスト!?なんて一瞬期待したんですが、出てきたのは無名の男性シンガーで、観客も“え?誰?”みたいなムードに(笑)。そして、そのシンガーに任せてステージを去るカール……」
P1050067「2005年のEMFでは詩人のマリク・ユセフがゲストで出てきたんですが、その時も反応薄かったかも。僕は大興奮でしたけど(笑)」
S「ギターを弾きながらハイトーン・ヴォイスで歌う、そのシンガーは決して悪くはなかったのですが、知らないシンガーが3曲も歌うとなるとさすがに会場のテンションもダウン。再び登場したカールは最後に“これからナンバーワンヒットソングを歌うぜ!みんなわかってんだろ?”と客を煽り、“I Wish”のイントロが流れた瞬間に会場から歓喜の声! もちろんその後は大合唱でした」
「“I Wish”は2005年の時は観たんですが、今回は観逃してしまいました……」
J「僕はちょうど“I Wish”の直前に会場に到着したのですが、そんなプロセスがあったのですね。それにしても、“I Wish”の“みんなの歌”状態は凄かったですね!」P1040367
S「“I Wish”で終わるかと思いきや、その後アンコールでポリスの“Message In A Bottle”のカヴァーを披露。なんでまた最後にこの曲?みたいな感じはあったんですけど、この曲自体は誰もが知ってるほどの有名曲であるとはいえ意外と反応は薄く、あれほど合唱しまくるEMFの観客も軽く口ずさんでいた程度。やはり黒いアーティストの曲とそうでない曲とで反応がハッキリ分かれますね」
J「あれは正直“I Wish”で終わっておくべきでした」



■アレサ・フランクリン、7年ぶりに登場!
「次はメインのアレサ・フランクリンだったはずが、大幅に遅れ、その隙にラウンジで観たのがラヒーム・デヴォーン。今回はちょっとしか観られなかったんですが、ちょうど会場に着いた時に客席からピンクのブラだかパンティが投げ込まれ、ラヒームがそれをマイクに被せて凝視……というシーンで、すみません、それしか印象に残ってません(笑)。ピカソことデモント・パインダーが絵を描いてるのは相変わらずでした」
P1050107J「(アレサ登場までの)あの時間は長かったなあ。でも、相変わらず、客からは文句が出る気配もなかった。日本だったら場内アナウンスものでしょ(笑)。そんなのんびり感もEMFの名物だったりするのですが」
「同じ時間帯にはラウンジでメラニー・フィオナもあったんですが、アレサとまるかぶりで、残念ながらパス。これでもう3回目の出演のはずで、自分は初回しか観ておらず、その後、人気が出てきてからのパフォーマンスも観てみたかったんですが……。来日希望!」
S「メラニーはあまりの人気で入場制限がかかっていました。この3日間のラウンジ出演者の中で入場制限がかかったのはステファニー・ミルズとメラニーくらい。ましてや女王アレサと同じ時間帯にやってこの人気っぷりとは。僕もアレサを優先してメラニーはパスしたんです。メアリーJ.ブライジとディアンジェロとともにツアーを回っていたそうで、今後ますます人気が出るのかと思うと本当に残念ではありました。日本から来ていた友人の一人は、この3日間でメラニーのステージが一番良かったと言っていたくらいです。でも、アレサはもう伝説というか、観ておかなきゃいけない存在な気がして、この機会を逃がしたら次はいつ観られるかわかりませんし、どうしても最優先になってしまいましたね」P1050120
「そうなんですよね。さすがにアレサはパスできない(笑)。で、当初は何故かPM9:47という、中途半端というか妙に細かい時間設定で始まる予定だったアレサ。2005年以来7年ぶりの登場です。一時は健康状態も心配されたアレサですが、タンジェリン・カラーのドレスに身を包み、オーケストラを従えて歌う女王様は、そんなこともあったのかと思わせるほどで。前半は“(You Make Me Feel Like)A Natural Woman”“Think”“I Never Loved A Man(The Way I Love You)”といったアトランティック時代の代表曲を中心に、さすがの貫録を見せつけてくれました」
J「登場はジャッキー・ウイルソンの“Higher & Higher”でしたよね。もうキャリアの縦軸が全然違うあたりがアレサです」
P1050121S「“The House That Jack Built”も渋い選曲でしたね。最近ではマライアの“Touch My Body”のカヴァーなんかもライヴで歌ってしまうというアレサですが(笑)、今回のセット・リストでは全体的にスロー~ミディアムなテンポの曲が多かったですね。個人的には“Get It Right”あたりをガツンと歌って欲しかったです」
「“Get It Right”は2005年の時、歌ったんですよ。当日にルーサー・ヴァンドロスが他界したこともあって。その代わりではないですが、今夏、映画『Sparkle』のリメイク版が公開されることもあってか、“Something He Can Feel”を歌ってくれたのは嬉しかったです。それにしても、女王様だけに扱いも特別というか。途中、衣装替えを兼ねて有名アーティストからのヴィデオ・メッセージなどアレサを称えるアレコレもありましたね。エッセンス誌代表のミシェル・エバンクスとニューオーリンズ市長がアレサに〈Power Award〉を授与する場面もありましが、衣装を替えて出てきた時にラヒーム・デヴォーンの“Woman”をラヒームの名前を呼びながらアドリブで聴かせたのは感動的でした。実はこの時間、ラウンジでショウをやっていたのがラヒームだったというあたりにも勝手にグッときてたんですが……当のラヒームは女性の下着を手に取ってニヤニヤしてるんだから、女王様の賛辞も台無し(笑)」P1050152
J「それがブラック・ミュージックの生命力の一面ですよ(笑)」
「ハハハ。確かにその通りです!」
S「この授与式の時にアレサの過去の写真がスクリーンに映し出されて、『Jump To It』のジャケが出てきたんですけど、何故がそれが日本盤で、帯にカタカナで“ジャンプ・トゥ・イット”と書かれていたという(爆)」
J「気づかなかったけど、それ最高!」
P1050155「僕も気づかなかったですけど、笑えますね。で、後半はピアノ弾き語りで“I Will Always Love You”を歌ってホイットニー・ヒューストンをトリビュート。去年出した新作からはブルース曲のカヴァーだったり、終盤は“Amazing Grace”やビショップ・ポール・S・モートンを迎えたゴスペル曲だったりとルーツ色の強いステージで、2005年のステージのようにアリスタ時代のモダンな曲を期待した自分としては若干退屈な場面もありましたが、いずれにしてもアレサの包容力と女王っぷりはもの凄く感じ取れました」
J「そうですね、かなり贅沢ですけど、そんな不満はちょっと残った感じですね」
S「ホイットニーのカヴァーは感動的だったんですけど、その後が一曲一曲がダラダラと長すぎて観客のテンションもダウンしてたように感じました。アレサの歌声そのものは本当に素晴らしくて今回生で聴けたことも嬉しかったのですが、アリスタ期の曲とかも聴きたかったなとか思って……なんだかしっくり来ない感じはありました。もちろんそれはディアンジェロの時と同じく期待値が高かったからこそ、アーティストへの愛があるからこその思いなんですけどね(笑)」P1050160
J「ソウル・ミュージック界のシンボリックな人だから、それをどう風格高く演出するかという点に重きが置かれていたのでしょう。でも、どうであれ、アレサのステージを目の当たりにできたことは僕の人生にとっても大きかった」
「JAMさんがそんなふうに仰るんだから、相当のものですよ!」


■今年の大トリはディーヴァづくし!
「てっきり今年はアレサが大トリかと思ったんですが、開催直前になって〈Special Weekend Encore Performances〉と銘打ったショウがアナウンスされ、チャカ・カーンが大トリに決定。女王を差し置いて?という気もしましたが……これはちょっと驚きでしたね」
P1050167S「EMF開催の直前にチャカの出演が発表されたんですけど、もうすでに豪華すぎるラインナップだったのに、これでもか!ってくらい、さらに豪華になりましたよね。アレサが大トリじゃなくて文句を言うんじゃないかと思ったんですけど、実際この日チャカのライヴが終わった時間って深夜1:30くらいだったので、アレサがこの時間まで起きてるとなるとツラいでしょうし、結果的にはこの順番でよかったですね」
「確かに(笑)。で、チャカの前には、TV Oneのリアリティ・ショウ『R&B Divas』に出演するモニファ、ニッキー・ギルバート(ブラウンストーン)、シリーナ・ジョンソン、キキ・ワイアット、フェイス・エヴァンスの5人がショウを行うというので、盛大なフィナーレになるのだろうと期待していたわけですが。この1年近くの間に亡くなったR&Bスターの代表曲を5人が歌うというトリビュート・ショウ。モニファが歌うドナ・サマーの“Last Dance”を筆頭に、トリビュートの対象をスクリーンに映し出し、リレー形式で歌っていくという」P1050163
J「このラインアップを視界に全て収められる幸福感! 堪りませんね
S「もう、この5人ってR&Bファンにはたまらない組み合わせですよね! モニファの衣装はインパクトがありすぎて……全身キラキラのスパンコールのフードをかぶったねずみ男のような衣装だったんですが、歌よりもそっちが気になってしまいました(笑)」
P1050174「同じく(笑)。続いてニッキーが歌うヴェスタの“Congratulations”。これは泣けました」
J「歌も演奏も完璧なトリビュートでした。普通、泣きます」P1050171
「シリーナ・ジョンソンが歌ったのはエタ・ジェイムズでお馴染みの“At Last”。これはビヨンセのイメージも強いのでプレッシャーもあったと思いますが、シカゴ・ソウルの後輩として堂々たるパフォーマンスを見せてくれました。ドッシリとディープに」
P1050176J「この選曲にも焦りました。この場でシリーナ版の“At Last”が聴けるとは」
S「シリーナの声は説得力がありますよね。個人的には今まで聴いた“At Last”のカヴァーの中で一番好きです」P1050179
「そして、ひときわ歓声が上がったのがフェイス・エヴァンス。フェイスはニック・アシュフォードに捧げるパフォーマンスでアシュフォード&シンプソン作/ダイアナ・ロスでお馴染みの“Reach Out And Touch”を。これも熱かったです」
P1050182J「フェイスも流石でした。ダイアナ・ロスのテイクを気にせず、あくまでも“Reach Out And Touch”というアシュフォード&シンプソンが書き下ろした曲に対するリスペクトを感じさせる力唱でした」
S「フェイスのライヴは過去に観に行ったことがあるんですが、個人的には今までで観たライブ上位5位以内に入るほど、それはもう素晴らしいものだったんです。今回のパフォーマンスでもCDでは聴けないような爆発的な声量で歌っていて、これが情熱的で、聴いてるこっちまで世界に入り込んでしまいました」P1050192
「最後はキキ・ワイアットが歌うホイットニー・ヒューストンの“I Wanna Dance With Somebody(Who Loves Me)”。キキもさすがの歌ぢからで、最後は先に歌い終えた4人も登場し、大団円を迎えるという」
J「余りにも豪華なステージで、オロオロしちゃいました」
S「一人一曲ずつの歌唱だなんて勿体無さすぎるくらいのメンツだったのですが、その一曲に全身全霊を込めてどのアーティストも力いっぱい歌っていて感動的でしたね。この中で一番人気のあるフェイスがトリではなく最年少のキキが最後に歌い、しかもホイットニーのカヴァーというのはプレッシャーもあったと思いますが、堂々と歌っていて彼女は本当に歌える人だなってのを実感させられました」
P1050195「なるほど。で、この後、僕はチャカ・カーンが出てきて、みんなで“I'm Every Woman”でも歌ってホイットニー追悼かと思ってたんですよ。そしたらステージ・チェンジでしばし休憩。結局さっきのはリアリティ・ショウの宣伝を兼ねたパフォーマンスだったと。でも、その間が中途半端に長くて、お客さん帰っちゃうし、急激に会場の空気が盛り下がって……」
S「そのままの流れで全員で“I'm Every Woman”ってのは僕も全く同じ事を考えていました。でもあくまでチャカのステージはまた別モノだったんですね。一応休憩時間にもDJが曲を流して観客に歌わせてテンションをキープさせてたんですけど、時間は押すし、すでに時間も深夜でお客さんもゾロゾロと帰っていたので、その後のチャカのステージが盛り上がるか心配でした」
J「あのインターバル、不要でしたね。色々と事情があるのは分かりますが。客の帰る姿って見たくないんですよ。しかも、悪びれずニッコニコで帰るからなあ。あ、これもEMF名物ですが(笑)」P1050208
「ホント、EMF名物です。見たくないほうの(笑)。というわけで、大トリのチャカ・カーンですが。ダイエットしてスリムになったチャカはどことなくルーファス時代の姿を連想させたりして。“お客さん少なくなっちゃったけど、やるわよ”的な感じで、ガラガラになったドームを盛り上げてましたね」
J「あのダイエットには驚きました。見る方の構えも全然変わるし、目前の彼女にオーバーラップさせるものも変わるので、この容姿には天晴です」
P1050210「たぶん40分くらいのステージだったと思うんですが、これが結構いいパフォーマンスで。“Sweet Thing”は、前日のMJBに負けじとガラガラの客席にマイクを向けて観客を合唱させてました。でも圧倒的に歓声が上がったのは“Tell Me Something Good”。本国ではこれが人気ですね。“Through The Fire”はやらなくても、これはやる。チャカも痩せたせいか、全体的にキビキビしたパフォーマンスで観ていて気持ちよかった」
J「だから(チャカのステージ前の)インターバルは不要だったと。本当にアリーナはスカスカになっちゃったからなー。一体感が減ると、感動も目減りします。素晴らしいパフォーマンスだっただけに、尚更そう感じてしまいます」
S「とにかく高音が凄まじかった! “My Funny Valentine”も歌っていましたね。これはなんか意外というか、EMFでやるにはあまり盛り上がらない感じはあったのですが、でもパフォーマンスとしては良かったです。“Through The Fire”は最近は日本でも歌わなくなったみたいですね」P1050201
「最後は“Ain't Nobody”。これもMJBほか、今回のEMFでもいろんな人が歌っていて人気ですが、本家のチャカが歌って最後を締めるという。でも、フィナーレにしちゃ盛り上がりに欠けたのが残念でしたね。やはりこうなるとメイズが恋しくなってしまうというか……」
J「林くん、それは禁句です(笑)」
「……(笑)」
S「数年前まではEMFと言えばメイズって思うくらいでしたもんね。今回日本からも音楽業界の方たちをはじめ数名がEMFに来ていましたけど、みなさんに感想を伺ったところ今回の中で総合的にはメアリー・J.ブライジがベストだったという声が多かったです。やはりMJB Da MVP!」
J「同感です」
P1040903「僕もです。それにしても去年からのEMFの気合いの入り方は凄くて、今年も充実しまくりでした。観られなかった人も多く、満足できたような、できなかったような感じですが(笑)。毎年言ってますけど、ホントにR&Bのフェスとしては現時点ではこれ以上のものは存在しないと100%断言できますね。出演しないアーティストがサイン会とかのためだけにNOLA(ニューオーリンズ)に来るくらいですから。来年も……やっぱり行っちゃうのかなぁ?」
S「EMFには一度は行ってみたい!って思っていたので念願の夢が叶って感無量でした。逆に言うならば一度行けば気が済むのかなーなんて思ってもいたのですが、すでに今回ハマってしまって、また来年も行きたいっていう気持ちでいっぱいです。日本では観られない貴重なライヴの数々と、会場での臨場感を体験してますますブラック・ミュージックが好きになりました。ニューオーリンズの街自体もとても魅力的ですし、僕が言うのもナンですが多くの日本の方に訪れていただきたいと思っています。早くも来年の出演者が気になっているところです」
J「今年はEMFの後に2日休暇を取って、EMFの余韻に浸りながらのNOLA三昧と思っていたのですが、どこでもらったのかかなり重度の風邪をひいて、その2日は薬を貪りながらホテルの床に伏すという、悔やんでも悔やみきれない3年振りのNOLAとなってしまいました。ベニエも一度しか食べられませんでした。この体たらくも含めて、2012年のEMFは記憶に刻まれていくと思うと……」P1040361
「それは散々でしたね。では、来年リベンジということで(笑) ……というわけで、皆さま、お疲れ様でした! 来年もNOLAでお会いしましょう!?」



トラックバックURL
コメントを書く




情報を記憶: 評価:  顔   星