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2012年04月

K'Jon / Moving On

K'JON久々に男性ソロ・シンガーで。エリック・べネイの新作も話題だけど、エリックに関しては最新号のbounceに記事を書いたので、5月の来日公演後にライヴ・リポートとあわせて改めて。というわけで、今回はシャナキーからリリースされたK・ジョンの新作を。2009年にユニヴァーサル・リパブリックの配給で発売された初のメジャー・アルバム『I Get Around』は日本盤が出なかったのに、今回はヴィヴィドから日本盤(輸入盤国内仕様)が初登場! ライナーノーツは自分です…と自分で書くのも何だかなぁという感じですが、これまで日本の紙メディアでほとんど無視されてきた才能を放っておけん!という勝手な使命感から、ここでもちょっと書いておきます。

K・ジョンはデトロイトのR&Bシンガー。“On The Ocean”の人と言えば通じるか? もの憂げだが芯のあるテナー・ヴォイスが特長となるシンガーで、僕が彼の音楽を聴いたのは、今も本人が運営している自主レーベルUp&Upから出されたセカンド『The Ballroom Xplosion』(2007年)が初めて。デフ・ジャム・サウス発のサントラ『2 Fast 2 Furious』(2003年)でR・ケリーを意識したようなミッド・バウンス“Miami”を披露していたとか、シャリーファの2006年作『Point Of No Return』で曲を書いていたなんてことは後から知った。しかも、現在までに3枚のミックスCDも出していた…なんてことも、実は最近知ったことだったりして(恥)。

『The Ballroom Xplosion』に興味を持ったのは、アルバムがステッパーズをテーマにしたものだったから。地元の大先輩であるドラマティックスの曲を大ネタ使いした“Feels Like Love”とか本当によく聴いたけど、このアルバムというのが、その数年前にシカゴ・ステッパーズをリヴァイヴァルさせたR・ケリーに対抗したような内容でして。K・ジョンはデトロイト版のステッパーズである“(デトロイト・)ボールルーム”を謳ってレペゼン・デトロイトをしていたわけ。シカゴ・ステッパーズもデトロイト・ボールルームも、ともに中西部の黒人コミュニティにおけるフォーク・ダンス(・カルチャー)の一種。だけど、踊り方や使用曲は微妙に違うようで、こんな比較映像もあったりするのだが、何がどう違うのかはダンスの専門家じゃない僕にはよくわからない。

その『The Ballroom Xplosion』に収録され、中西部一帯でジワジワと人気を集めて全国ヒットとなったのが“On The Ocean”というスロウなステッパーズ/ボールルーム・ソングだった。これはメジャー移籍作『I Get Around』にも再収録され、何とビルボードの「R&B/Hip Hop Songs」に75週チャートインという驚異的な記録も打ち立てた。レコード・リサーチ社が出しているコレでは、集計途中ということもあってか73週チャートイン(00年代において3番目に長くチャートイン)したことになっているのだけど、最終的には1位のメアリー・J・ブライジ“Be Without You”(75週)と並び、男性R&Bシンガーでは90年代のアッシャー“You Make Me Wanna…”(71週)を抜いて史上最長チャートイン記録保持者となってしまった。数年前、日本ではネクストNe-Yoな美メロ王子たちが大人気だった頃に、本国ではこんなに粋で大人なR&Bが流行っていたわけです(笑)。また、この“On The Ocean”をキッカケにステッパーズ熱も再燃してきている模様。L.J.レイノルズの“Come Get To This / Stepping Out Tonight”なんかも、これに刺激されたのかな?と思ったり。

そんなわけで新作は、大雑把に言うと、前半がメインストリームR&Bサイド、後半がステッピン・サイドという二部構成。プロデュースはK・ジョン本人と、デトロイト、NY、アトランタ、マイアミの新鋭~中堅クリエイターで、Daheartmizerことマーカス・デヴァインやNeff-Uことセロン・フィームスターも関与。地元デトロイトのラッパーなども客演している。前作収録曲の続編“On Everything Pt.2”やオートチューン加工のヴォーカルが印象的な“Bad Gurl”が登場する前半も刺激的だけど、個人的にはやはりステッピンな後半かな。リード・シングルの“Will You Be There”なんかは明らかに“On The Ocean”を踏襲したバラードだけど、この路線はいいですね。特に、これまたR・ケリーの近作を意識したような、というかメアリー・Jの“All That I Can Say”みたいな激メロウ&スムーズなステッピン・チューン“I'm Good Boo”を目下ヘヴィロテ中。

やっぱり僕はこういうステッピン・ソングみたいなのが一番好きなのかも。先日も、とあるステッパーズ大会のプレイリスト(新旧ステッピン定番曲がズラリ!)を見ていて、自分で妙に納得してしまった。で、こういう地方独自のムーヴメントって、改めていいなぁと。何年か前、ミュージシャンもネットで交流できる時代だからサウンドや流行に地域性を見出すことはもはやナンセンス…みたいに言われてたことがあったけど、いやいや、そんなことはないんです。特にブラック・ミュージックは地元で流行ってナンボの世界。それがこのジャンルの面白いところというか。K・ジョンは、そんなことに改めて気づかせてくれたシンガーなんじゃないかなと思っていたりします。



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Sy Smith / Fast And Curious

Sy女性モノの新作がいろいろ登場してますが、今回はサイ・スミス。サイといえば、2010年暮れに急逝したティーナ・マリーへのトリビュート・ソングをいち早く作り、ネット上で無料配布したことも記憶に新しい。“Teena(Lovergirl Syberized)”と題されたその曲は、ティーナのエピック時代のヒット“Lovergirl”をサイ・スミス流(Syberized)にリメイクしたもの。ロックっぽいオリジナルとはまるで印象の異なるメロウでスムーズな曲に仕上がっていた。が、そもそもこの追悼リメイクを持ちかけたのは、クラブ系マルチ・プレイヤーのマーク・ド・クライヴ・ロウ(MdCL)。そのリメイクがキッカケとなったのか、4年ぶりとなる今回の新作では、全編でそのMdCLが演奏/プロダクションを手掛けている。

サイ・スミスといえば、“サイバー(S(C)yber)”とか“サイコ(Psyko)”をキーワードに、コケティッシュな美声でオーガニックかつフューチャリスティックなネオ・ソウルを披露してきた女性シンガー。と言うより、ブラン・ニュー・ヘヴィーズの2003年作『We Won't Stop』でリードに抜擢されたとか、TVドラマ「アリー my Love」にグループのシンガーとして出演していた…と説明した方がキャッチーかな。ミニー・リパートンに強く影響を受けている人なんだけど、ワシントンDCのハワード大学に通っていた頃にはゴー・ゴーのバンドでも活動していたというだけあって結構タフな一面もあり、独特のリズム感を持っている。10年ちょっと前にメジャーで作った最初のアルバムはお蔵入りになってしまったが(後に『Psykosoul Plus』としてリリース)、その後はインディからコンスタントにアルバムを発表。これまで自身のアルバムでは、ATCQのアリ・シャヒード、ジェイムズ・ポイザー、ヴィクター・デュプレー、ドレー・キング、タイ・マクリンなど、つまりNY、フィリー、DC、ダラスといったネオ・ソウル聖地のプロデューサーと組んできたわけで、そういう意味ではクイーン・オブ・ネオ・ソウル!といった感じだけど、まあ、こういう表現は本人は喜ばないでしょう。近年はフォーリン・エクスチェンジ(FE)一派との交流も盛んで、DVD+CDセットで発売されたFEのファン招待プライヴェート・ライヴ『Dear Friends:An Evening With The Foreign Exchange』でも歌ってましたね。

一方、プロデュースを手掛けたMdCLは、日本人とニュージーランド人のハーフで、UKは西ロンドンのブロークンビーツ・シーンの演奏家/クリエイターとして、IGカルチャーなんかと一緒に評価されてきた奇才。オールド・ソウルやジャズへの愛着を示しながらエレクトリックでコズミックな音世界を創り上げてきた彼の音楽は(歌もの)R&B好きに訴える要素もわりとあって、オマーやサンドラ・ンカケ(←エスペランサ・スポルディングがお気に入りだという仏女性)らが参加したトゥルー・ソーツからの最新アルバム『Renegades』も、かなりいい内容だった。7~8年前に渋谷のカフェかどこかでやったライヴを観た時は、まだまだアンダーグラウンドの人という感じだったけど、近年はサンドラ・セイント・ヴィクターやニコラス・ペイトンなど、わりとデカい仕事が舞い込んできていて見逃せない。10年前ならア・タッチ・オブ・ジャズ一派やキング・ブリットあたりがやっていたことを、今はこの人がやっているというか。ネオ・ソウル・リヴァイヴァルみたいなものがあるとするなら、そのカギを握っているのはこのMdCLなのかも…と個人的には思っていたりして。

そんなMdCLとサイが結びついたのは必然だったというか、今回の新作はサイのミスティックでメロウなムードとMdCLらしいスペイシーでエレクトリックな音色がうまく噛み合っていて、最高にカッコいい。前のめりのスキップ感(?)が独特なMdCLのトラック上でオシャレに尖がるサイさんが何とも素敵。アルバムの楽曲はサイとMdCLの共作なのだけど、先の“Teena(Lovergirl Syberized)”を含めカヴァーも3曲ある。残る2曲のうち、ひとつはビリー・オーシャンのブラコン・ダンス・チューン“Nights(Feel Like Getting Down)”のカヴァー。これを今回サイはインディ・(ネオ・)ソウルの同士とも言えるラサーン・パターソンとデュエットしていて、たまりません。でも、それ以上に僕が興奮した、というか膝を打ったのが、ラー・バンド“Messages From The Stars”のカヴァー。ラー・バンドのオリジナルがまさにサイバー・エレクトロな曲で、まあ、この曲をチョイスしたのはMdCLなんだろうけど、改めてラー・バンドを聴き直してみたら、今までサイが目指してきた音世界ってこれなのかも?なんてことも思ってしまった。それくらいドンピシャ。と、いずれのカヴァーも80年代の名曲ということから想像がつくように、今回の新作のテーマは80sエレクトロニック・ソウル。そういう意味では、70年代ソウル風だった前作『Conflict』と対になるアルバムと言えるのかな?

ちなみに今作、当初は日本のレコード・ショップでは取り扱う予定なしとのことだったので、本人のオフィシャル・サイトから直接購入。ご丁寧にサインまでしれてくれてるんだけど…実は僕、昔から著名人のサインとかに全く興味がなく、ジャケットにサインされたらレコードの価値が下がるとまで考えてしまう変わり者。もちろんサイさんのサインは嬉しいが、サインなしのCDも欲しくて、結局日本でも買えるようになったので、もう一枚買ってしまった(笑)。このデジタル・ダウンロード時代にめんどくさいことやってます…。



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Philadelphia International Classics:The Tom Moulton Remixes

Tomちょっと間があいてしまった。書いておきたいアルバムが本当にたくさんあるのだけど、なかなか書く時間(というか気力ですね…)がない。新譜ではメラニー・フィオナ、サイ・スミス、SWV、ジョイ・デナラーニ(の英語詞盤)、キャリン・ホワイト、Kジョン、テイク・6などなど…と、今後取り上げる予定のものを忘れないように、ここにメモしておきます(笑)。リイシューはもっとあるのですが。

さて、前回は昨年デビュー40周年を迎えたEW&Fについて書いたが、今回は同じく昨年創立40周年を迎えたフィリー・ソウルの総本山、フィラデルフィア・インターナショナル・レコーズ(PIR)のリイシューについてサラッと。PIRといえば、一昨年に日本のソニーから未CD化のアルバムを含む再発が行われるも、昨年は日本も海外もPIRのリイシューに関してはほとんど音沙汰なし。

ところが今年に入って、米レガシー/ソニーからPIRのコンヴェンション・ライヴの模様を収めた『Golden Gate Groove:The Sound Of Philadelphia~Live In San Francisco 1973』が発売。このライヴ、あのドン・コーネリアスが司会進行役なんだけど、ちょうどドンが他界した頃に発売されたのは皮肉というか何というか。そして今年は英Harmlessも一年遅れでPIRの創立40周年を祝って数種のコンピをリリースする。で、まず届いたのが、トム・モールトンがリミックスしたPIR名曲からなるCD4枚組セット。わりと詳細なブックレット(英文ライナー)もついて3,000円以内で買えるお得盤だ。トム・モールトンがフィリー・ソウルをいじったものではフィリー・グルーヴの音源を使った『Philly Re-Grooved』が現時点で第2集(第3集も発売予定)まで出ているけど、PIR音源となると、曲が有名なぶんオリジナルとの違いが判りやすいというか、あの名曲がどうミックスされてるんだろう?っていう興味が二倍増し。

トム・モールトンは言わずと知れたリミキサー/エンジニア。ディスコ・ミックスの元祖的な存在で、リミックスという概念は彼の行為によって生まれたとされる。たまにDJと間違われることもあるが、この人はラリー・レヴァンみたいなDJが現場でプレイするためのダンス・ミックスをシコシコと作っていた、いわばテープ職人。もともとモデルをやっていた人で、ダンス・フロアでいい曲がかかるのに3分ぐらいで終わってしまい、それだと踊るには短すぎるっていうんで、インストの気持ち良い部分などを引き延ばしたりピッチを変えたりして長尺ヴァージョンを作り始めた…っていろんなところに書かれてますが。まあ、そういう意味では非常にDJ的なセンスを持った人ではある。オリジナルの楽曲にさらなる昂揚感を加えたモールトンのミックスはたちまち評判になり、70年代後期にはいろいろなレコードに〈A Tom Moulton Mix〉という文字が刻まれ、ブランド化。しまいにはプロデュースにも乗り出し、TJMというプロジェクトのレコードまで出してしまった。今も現役で、近年はブラン・ニュー・ヘヴィーズやクール・ミリオンらのアルバムをモールトンがいじった“リミックス・アルバム”なんかも出している。

そんなモールトンのPIRリミックス集。11分に及ぶMFSBの“Love Is The Message”など70年代にモールトンが手掛けた伝説的リミックスから、2011年に新たにミックスされた楽曲まで、計31曲が収められている。各曲の尺は6~10分くらい。ノーマン・ハリスのギターやらロニー・ベイカーのベースやらアール・ヤングのドラムスやらラリー・ワシントンのパーカッションやらが浮き彫りにされ、グイグイ迫ってくる感じがたまりません。それぞれの曲がどんな仕上がりなのかは実際に聴いていただくとして。ただ、“リミックス”とはいうものの、普通にPIRの名曲集としても楽しめる内容だったりもします。あと、どさくさに紛れてトランプスにいたロバート・アップチャーチのシングルが初CD化されていたりするのも面白い。Harmlessからは今後、PIR~TSOPの名曲を集めた40周年記念10枚組ボックスも登場予定! カレイドスコープのシングルなど初CD化の曲も多く、特にディスク3が凄い!と先日もFacebookで盛り上がったばかりなのだが、これはまた発売され時に熱く語り倒します(笑)。

ちなみに一連のフィリー・ソウル再発については、HMVさんのサイトでも特集されているので、そちらもどうぞ!



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Diggin' Kalimba~Tribute Mixed by MURO

EW&F×MUROジャケット写真取り上げたいアルバムは山のようにあるのだけど、今回は取り急ぎ告知的なものを。昨年デビュー40周年を迎えたアース・ウィンド&ファイア(EW&F)について、だ。昨年から今年にかけて、EW&F及びカリンバ・プロダクション関連の再発がソニー・ミュージックで行われ、今年の夏前には著名アーティストが選ぶEW&Fの名曲ベストを含んだ新作『Now Then & Forever』のリリースも予定されている(新曲“Guiding Lights”は発表済)など、彼らの周辺が騒がしい。

そんななか一連のリイシューの最後を飾ったのが、3月7日に一挙15タイトル発売となったEW&Fコロムビア時代のアルバム群。当時の日本盤ジャケットや帯を忠実に再現した紙ジャケ/Blu-spec CD仕様(DSDリマスタリング)での再発で、アルバムのベーシックな解説を金澤寿和氏と僕が手分けして書いた。加えて解説部分には、EW&Fに縁のある著名人のコメントも掲載。『All 'N All』(77年)など5枚のジャケットを描かれたイラストレーターの長岡秀星氏などにインタヴュー(コメント取り)を行ったのだが、そのうちのおひとりで『Head To The Sky』(73年)にコメントが掲載されたのが、King Of Diggin'ことDJのMURO氏。NYのハーレムでEW&Fの“Reasons”を聴いた時の衝撃など、興味深いお話をしていただき、取材も非常に盛り上がった。

その取材中、EW&Fのリミックスの話になり、そういえばSoul Source監修の『Soul Source~Earth Wind & Fire Remixes』(2002年発売)に意外にも(?)MURO氏が参加していなかったことを指摘。すると、「あれ、僕もやりたかったんですよ」とMURO氏。そこで、再発盤購入者のためのプレゼント企画を考えていたソニーの担当ディレクター氏に、「(リミックスではないが)MUROさん選曲のEW&FミックスCDを聴いてみたい」と提案したところ、MURO氏も「ぜひやりたい!」という流れに。かくして、いろいろな手続きを経て、MURO氏によるEW&F史上初となるオフィシャル・ミックスCD『Diggin' Kalimba~Tribute Mixed by MURO』が完成した(詳細はココで)。

ひと足先にラフを聴かせてもらったが、当然ながらMUROワールド全開の選曲&流れ。基調となるのは“On Your Face”的な明快さ、かな。ファンキーでキャッチー。EW&Fだけでなく、エモーションズやポケッツ、デニース・ウィリアムズ、DJ・ロジャースなどカリンバ・プロの曲も選ばれている。必携!…と言いたいところだが、先に少し触れたように、これはEW&Fの紙ジャケCD全15枚購入者のみにプレゼントされる非売品。そんな誰もが手にできないものを紹介するなよ…という声も飛んでくるかもしれないが、まあまあ、こういうこともありますよ。このミックスCDのために全部買いましょう!とは言いません。けれど、自分が関わった云々は別にして、今回の紙ジャケCDは永久保存盤となるはずの決定版。これからEW&Fを聴いてみよう/アルバムを揃えたいという方は、この機会に15枚ゲットしておいても損はしないと思う。何だかメーカーの回し者みたいだけど…仮に僕が学生でEW&Fのアルバムを持っていなかったらバイトして買ってたと思います。ミックスCDの応募締め切りは4月25日。

さて、そのEW&F、既に各所で報じられているように来日公演(詳しくはコチラ)が決定した。5月17日(木)、東京国際フォーラムで一夜限りのライヴ。ちょっと前にツイートもしていたのだけど、この日は70年代中期EW&Fのブレーンだったチャールズ・ステップニー(76年没)の命日にあたる。メンバーなどの詳細は未定だが、モーリス・ホワイトは不参加だろう。EW&Fとしての来日公演は2009年12月の公演以来2年半ぶり。個人的には、一昨年のEssence Music Festival、昨年7月4日のフィラデルフィアでの合衆国独立記念祭コンサート(この時のバック演奏はザ・ルーツ!)と、2年連続でEW&Fのライヴを観ているのだけど、フィリップ・ベイリーの息子(Jr.)もヴォーカルに加わったステージはなかなかのもの。モーリス不在は確かに寂しいけど、それはもう仕方のないこと。現在進行形のEW&Fを楽しみたいところだ。

ちなみに、MURO氏とは、また別のお仕事も一緒にさせていただいた。これは改めて紹介したいと思っています。



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Estelle / All Of Me

EstelleR&Bの新譜、とにかく女性シンガーものが多いです。で、今回はエステルの新作を。前作『Shine』から約4年ぶり、通算3作目。アトランティック(が配給するジョン・レジェンド主宰のホーム・スクール・レコーズ)からのワールドワイド・リリースとしては、これが2枚目。4月4日には、その日本盤も発売された。実はこのライナーノーツを書いたのだが、経歴や客演作品、プロデューサー、ミックステープがどうの…などはライナーでゴチャゴチャと書いたので、ここではサラッといこう。

延期を繰り返しての、ようやくのリリース。当初は2010年秋の発表予定で、その頃はデイヴィッド・ゲッタとアフロジャックがプロデュースした“Freak”が新曲として話題になっていた。カーディナル・オフィシャルを招き、ソウルⅡソウル“Back To Life”のフックを引用したエレクトロ・ビート・チューン。結局これは新作が延期されるうちにゲッタのリーダー作『One More Love』(のデラックス盤)とかダンス映画のサントラ『Step Up 3D』に収録されて、今回の新作には未収録。で、もう一曲、新作のバズ・シングル的な形で発表されながらアルバム未収録となったのがDJ Frank E制作の“Fall In Love”。ジョン・レジェンドとナスそれぞれとの共演ヴァージョン(とヴィデオ)も話題になったネオ・ソウル×ハウス的なメロウな四つ打ちダンス・チューンで、こんないい曲が未収録だなんて…って感じだけど、日本盤には“Freak”とともにボーナス・トラックとして収録されております。ちなみに今回の日本盤に収録された“Fall In Love”はジョンとナス両者が合体したヴァージョン。って、いきなりサラッといかない話でした。

で、アルバムは、有名どころのプロデューサーだと、ジェリー・ワンダ、アイヴァン&カーヴィン、ジェイムズ・ポイザーなんかが関わっているのだけど、エステルらしいジャンル横断型の全方位スタイルはいつものまま。ハスキーな声でラップ(・シンギング)を織り交ぜた歌唱もこれまで通り。それでもベースにはオーセンティックなソウル/R&B感覚みたいなものがあって、最終的にはちゃんとそこに着地するというか…そこらへんが僕みたいなリスナーを惹きつけるのかも。そういえば、本国イギリスのみで発表されたデビュー・アルバム『The 18th Day...』を、僕はbmr誌の2004年個人年間ベストで1位にしていて、「US的流行を咀嚼しつつ新しい世界を描き出したUKモノということで不思議な衝撃を受けた一枚」とか評論家気取りで書いていたが(恥)、まあ、その後の彼女の活動を見てみれば、大きく外れた意見ではないと思う。近年のゲッタなどとのコラボは賛否ありそうだが、前作でのウィル・アイ・アムも含め、“時の人”を味方につけながら自身のソウルネスというかブラックネスのようなものを追求していく姿勢が何とも痛快です。

個人的に気に入ったのは、新作の正式リード・シングルとなった“Break My Heart”。ジョン・レジェンドもペンを交えたドン・キャノン制作のスムーズなミッド・チューンで、ヴィンセント・モンタナの78年曲“Warp Factor Ⅱ”を引用したセンスに惚れまくり。この路線では“Cold Crush”も素晴らしい。が、世間的には、クリス・ブラウンとトレイ・ソングスというふたりの“アメリカン・ボーイ”を招き、世界を股にかけてる自分たちをアピールした(?)“International(Serious)”が話題か。グラミー受賞曲となった前作のヒット“American Boy”もそうだったけど、エステルのUKガール目線のリリックって愛らしいというか、ルーツを忘れてなさそうで好感。クリエイティヴ・ソース版の“Wildflower”をネタ使いしたスウィートで切ないスロウ・バラード“Thank You”は怨念系の歌みたいだけど、この歌詞はエイコンによるもの。あと、ニーヨの制作でジャネル・モネイと共演した“Do My Thing”は、UK、USそれぞれの尖がり歌姫どうしのコラボで興味深い。ロッキン・ファンク・ソウルなこれは完全にジャネル寄り(“Tightrope”路線の)曲ですが。さらに、本作にはスポークンワード風なインタールードが5曲挿まれているのだが、それを手掛けたのがザ・ルーツのクエストラヴ。そういや、去年の7月4日にフィラデルフィアで行われた合衆国独立記念コンサートでエステルとザ・ルーツが共演したんだけど、あれはこの新作とも関係があったのかな?

以前、「自分が書く曲は100%実体験」と話していたエステル。今回は、『All Of Me』と題したアルバム・タイトル、それにモノクロームのシンプルなジャケットが伝えるように、これまで以上に自分の素を伝えた作品のよう。個人的には、リリックがどうの…と言われすぎると萎えるのですが、日本盤には素晴らしい歌詞対訳が付いておりますので(ボーナス・トラックの件もありますし)、そちらをおススメしたいです。



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